にっかり青江 "凍りのくじら" 2026年4月25日

凍りのくじら
凍りのくじら
辻村深月
”すこし・ふしぎ” な世界観に、ドラえもんが詰まった素晴らしい名作  主人公・理帆子はドラえもんを心から敬愛しており、それが彼女のアイデンティティの核となっているため、作中の随所にドラえもんの道具や名シーンが登場する。ドラえもんを知っていると、より深く味わえるはず。  最初は主人公の理帆子の考え方に共感できず、うまく感情移入できずにいた。それにもかかわらず、気づけば物語の引力に抗えなくなっていた。 少し読み進たころには、彼女の目線で世界を見るようになっていた。これはひとえに、作者の表現力のなせる業だろう。心理描写が極めて巧みで、理帆子の感情が強烈に伝わってくるのだ。彼女の考えには賛同できないのに、その会話を読むのがひたすら楽しいという、非常に稀有な読書体験だった。  終盤では、視界が滲んで文字が追えなくなるほど涙が溢れた(一人のときで本当によかった)。涙もろい人は、読む場所に注意したほうがいいかもしれない。  あんなに好きになれなかった理帆子だが、最後には彼女の幸せを心から祈る自分がいた。また、本筋の裏で描かれる同級生二人も非常に印象深く、立川さんには大きな拍手を送りたい。  辻村深月先生の他の作品も読んでみたくなっている。
読書のSNS&記録アプリ
hero-image
詳しく見る
©fuzkue 2025, All rights reserved