
ユメ
@yumeticmode
2025年3月17日

月まで三キロ
伊与原新
読み終わった
感想
「星六花」「エイリアンの食堂」「山を刻む」が特に好き。「星六花」で、気象台に勤務する奥平が「雪の結晶は、雲の中で、完全に物理プロセスのみによって生まれます。何の意図も意味もなく、ただの偶然によって、あの完璧な立体や幾何学模様が形成されている。性とも欲望とも遺伝子とも、関係ありません。なのに雪結晶は、誰が見たって、掛け値なしに、ただ美しい」と言うのに胸を突かれた。他者から美醜で判断されることのある生き物にとって、誰のためでもない美しさが存在し、それに感情を揺さぶられることは救いになりうる。「エイリアンの食堂」で、研究者のプレアさんが母を亡くした鈴花に「あなたもわたしも、一三八億年前の水素でできている。だから、わたしたちはみんな、宇宙人」と語りかけるくだりもそうだが、どの話も科学を用いて現実を人の心に寄り添うように解釈しているのがとても温かく、よかった。

