
Ryu
@dododokado
2025年3月19日

響きと怒り
ウィリアム・フォークナー,
桐山大介
まだ読んでる
女の子たちが歩いてきた。ぼくは門をあけて、女の子たちが止まってふりむいた。ぼくは言おうとして、女の子をつかまえて言おうとして、女の子が叫んで、ぼくは言おうとして、言おうとして、明るい形たちが止まりはじめて、ぼくは外に出ようとした。ぼくはそれを顔からとりはずそうとしたけど、明るい形たちがまた動きだしていた。形たちは丘をのぼると消えていって、ぼくは泣こうとした。でも息をすいこむと、また息を吐いて泣くことができなくて、ぼくは丘からころがりおちないようにして、丘からころがって明るいぐるぐるまわる形たちのなかにおちた。(p.54)
「おまえ、ロウソクなんか吹きけせないだろ」とラスターが言った。「おれが吹きけすから見てろ」ラスターはまえかがみになって顔をふくらませた。ロウソクがどこかに行った。ぼくは泣きだした。「だまれ」とラスターが言った。「ほら、おれはケーキ切るから、火を見てろ」
時計が聞こえて、キャディがぼくのうしろに立っているのが聞こえて、屋根が聞こえた。まだふってるね、とキャディが言った。雨はきらい。ぜーんぶきらい。それからキャディの頭がぼくのひざのうえに来て、ぼくを抱きながらキャディが泣いていて、ぼくは泣きだした。それからぼくはまた火を見て、明るいなめらかな形たちがまた動きだした。時計と屋根とキャディが聞こえた。
ぼくはケーキをすこし食べた。ラスターの手が来て、もう一つとった。ラスターが食べているのが聞こえた。
ほくは火を見た。(p.58)
お父さんがドアに行って、またぼくたちを見た。それから暗がりがもどってきて、お父さんはドアのところに黒く立っていて、それからドアがまた黒くなった。キャディがぼくを抱いて、ぼくたちみんなが聞こえて、暗やみが聞こえて、なにかの匂いがした。それから窓が見えて、そこで木たちがザワザワいっていた。それから暗がりがなめらかな明るい形たちになって動きだしたけど、それはいつもそういうふうになったし、キャディがあなた眠ってたのよと言うときもそういうふうになった。(p.75)


