ヨミスギヨミコ "天才望遠鏡" 2026年4月16日

天才望遠鏡
いわゆる「天才」と言われる本人ではなく、その人たちを近くで見ている側の視点で描かれている。 短編連作で、スポーツ・音楽・文学など、いろんなジャンルの話が一冊で読めるのも魅力的。 この作品は、「天才とは何か」を問いかけてくる内容。 もともとのセンスや特技はあるかもしれないけれど、その人自身が天才というより、周りがそう呼ぶことで“天才”という存在が作られているだけなのではないか、という視点がおもしろかった。 タイトルの「天才望遠鏡」も、天才を観測している側の存在を示していて、最後にその意味が繋がるのがよかった。 「あの人は天才だ」と言うのは簡単だけど、その言葉が本人を苦しめることもあるし、 そもそも天才とは、周りが作り上げた幻想に近いものなのではないか、という考えが印象に残った。 自分自身、音楽を生業にしていて、学生の頃は才能コンプレックスがわりとある方だった。 「才能のある人には敵わない」と思うことも多かった。 でも学生最後の年に優秀な同期と仲良くなったことがきっかけで、その考えが少し変わった。 自分も周りもその子のことを“天才”だと思っていて、どうしたらそうなれるのかと本人に軽く聞いたことがあった、 でもその子は「自分は天才なんかじゃない、できるまでやっているだけ、天才がいるとしたら、努力し続けられる人のことを天才と呼べるのかもしれないね」という言葉に衝撃を受けたし、妙に納得感があった。 この本を読んで、自分もまた、誰かを勝手に天才として見ていた“観測者側”だったのかもしれない、と感じた。
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