小夜 "燻る骨の香り" 2026年4月28日

小夜
@snowdrop_0
2026年4月28日
燻る骨の香り
読了。 『透明な夜の香り』から始まる『香り』シリーズの最終巻。 てっきり2冊目の『赤い月の香り』以降の話だと思っていたが、発売前の取材記事で、『透明な夜の香り』の前日譚ということを知る。 このシリーズを読んでいる間、影響されてか、自分の嗅覚も少し敏感になる。 時間軸でいうと、前2作の10年前。小川朔が20歳の時の話だ。 ただ今回も主体は別にいて、その主体目線で小川朔が描かれている。 主体は京都老舗(江戸時代から創業の店は、京都では、老舗と呼ばないらしいが。)の香を扱う会社の社長代理の女性。女性には妹がおり、小川朔並みの嗅覚をもち、その妹が香の調合を担っていた。そんな彼女の告別式の場面から、物語は始まる。 納骨の際、焼かれた骨から伽羅の香りがした。そこが物語の鍵になる。 著者は、"小川朔"は性格が悪いのに、読者にはそれがあまり伝わっておらず、今回は20歳の若い頃というのもあり、表現をキツめにしたし、京都の老舗店の一族を扱い、もっとドロドロにしたと述べていたけれど、 確かに物語後半で暴かれていくものは、ドロドロで、残酷なものばかりだったが、濃度的には、前2作と対して変わらないような印象をもった。 これを映像化したら、少し鮮烈さが出るのかもしれないが、個人的に、この著者の作品に限らず、もっと濃度の濃くて重い内容のものを、小説やその他メディアで、見ているから、耐性が付いているのかもしれない。 また、湊かなえ作品のような、読み終わりの後味が悪いわけではなく、最後の章で、少しだけ『赤い月の香り』以降の小川朔・新城・若宮一香らと、今回の主体の女性について、読者に良い方へ想像の余白をもたせる終わり方をしているから、キツさを感じないのかもしれない。 また、一香・満・今回の真奈にも、一定の距離感を保ちながらも、その主体の健康を心配し、支えてくれる人が周りに何人かいて、主体も、物語の後半に、その人たちの淡い優しさに気づく描写があるため、救われるのだと思う。 前もこのシリーズの感想で、述べたかもしれないが、この著者の作品の中では割とさっぱりしたドロドロだと思う。 小川朔は20歳で前職の大企業に勤め、調香師をして、辞めたことが、今回で明らかになるが、施設は18歳で出なければ行けない筈なので、2年在籍していたことになる。 透明な〜で触れられていた、月齢に応じて使う香水も、この時期には既に生産中止になっており、10代で……造っていたのかと末恐ろしくなった。また小川朔は、月の香水について『あれは不完全なものだ』と述べていたはずだが、そう述べる理由もこの本で察することができる。 小川朔と、新城が今の依頼された香りをつくる職を始めるきっかけが、この主体女性の一族に関わっていく中で、見られる。 館の登場人物の中で、結局新城だけが、あまり詳しく語られなかったように思う。小川朔、源さんはあったのに。 新城は、団地育ちで、本人いわく"普通"の家庭育ち。Kのイニシャルが掘られたオイルライターを持っている。3作を通して語られていたのはそれくらいだろうか。肝心なところで、彼は文字通り煙に巻くし。 一香もそうだったが、真奈についても、周りに飛び抜けた凄い人がいるので、霞んでしまうが、仕事ぶりの描写から見るに、普通に優秀で、デキる人ではないかと思う。 挙体芳香という概念(他にも反魂香など)を、この作品で知り、ネットでちょっと調べたときに、他人に所謂"モテる"香りというのは、健康的な人の香りらしい(透明な〜の小川朔が匂いで判断できるため、外見にあまり興味がないという話の場面でも触れていた気がするが)と知る。 確かに、不健康な人は、匂いに限らず、見た目も雰囲気もあまり近寄りたくないと感じてしまうし、逆に変な人に捕まりやすい傾向があるのかもしれない。 別に"モテたい"とは更々思わないが、3作を通して、睡眠や食事、運動、日に当たることなど、心身ともに健康的でいられることが生きている上で重要なのだと、3作のそれぞれの主体を見て思う。 なるべく健康的でいられるように、食事や運動、置かれる環境など気を配りたいものだと思った。
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