
いわたかな
@iwatakana
2026年4月28日
猫を棄てる 父親について語るとき
村上春樹,
高妍
読み終わった
最近Audibleで『海辺のカフカ』を聴き直しながら、こんな物語を書いた村上春樹さん自身はいったい何に深く傷ついた人なんだろう、と考えていた。その答えの一端を垣間見たような気がするエッセイ。
まず、お父さんから引き継いだ戦争のトラウマ。村上作品にときどき戦争や兵士が登場するのは、そういう背景があったのかと腑に落ちた。毎朝欠かさずお経を唱えていたお父さんの背中。戦争は人の中に長く深く傷を残す。やっぱり絶対にダメだ。
そして、お父さんと疎遠になっていく過程で生まれた傷。ありのままの自分を受け入れてもらえないというのはやっぱりつらいよ。お父さん自身も軍で嫌というほど経験しただろうになぁ。傷はこんなふうに次の世代へ連鎖していくのかと感じた。
それでも村上さんがすごいと思うのは、そうした中でお父さんの期待をはねのけ、自分の道を貫いたことだ。私は何度か負けてしまった。期待に応えるほうを選んでしまって、後悔している自分がいる。どうせ傷つくなら、自分の道を行くほうがいい。
村上さんの選択には、苦しい感情が伴ったかもしれない。でもその選択のおかげで、私たち読者は彼の創作の泉から湧き出す物語を享受できている。それはとてもありがたいことだと思う。
「好きなことはどこまでも追求するけれど、好きになれないものにはほとんど関心を持てない」という村上さんの性質が、娘とそっくりで思わず笑ってしまった。娘は娘のままですばらしいけど、なんだかお墨付きをもらったような気分、笑。

