猫を棄てる 父親について語るとき

15件の記録
- つつつ@capyandtsubasa2025年6月27日再読中p96「我々は、広大な大地に向けて降る膨大な数の雨粒の、名もなき一滴に過ぎない。固有ではあるけれど、交換可能な一滴だ。しかしその一滴の雨水には、一滴の雨水なりの思いがある。一滴の雨水の歴史があり、それを受け継いでいくという一滴の雨水の責務がある。我々はそれを忘れてはならないだろう。たとえそれがどこかにあっさりと吸い込まれ、個体としての輪郭を失い、集合的な何かに置き換えられて消えていくのだとしても。いや、むしろこう言うべしなのだろう。それが集合的な何かに置き換えられていくからこそ、と。」
- つつつ@capyandtsubasa2025年6月22日読み終わった再読中Audibleで再読した。中井貴一の朗読がすごくしっくりきた。主に眠れない夜に聞いていたのだけど、深い声とゆったりした朗読のテンポが村上春樹の文体にマッチして、夜の疲れ切った脳内にぐるぐる入り込んでくる感じが良かった。
- うみこ@umico52025年4月22日読み終わった村上春樹さんがお父さんについて書かれた文章。メッセージではなく、事実として書きたかったと書かれているように、淡々と子どもの頃の記憶やお父さんの戦争体験が語られる。戦争が一人の人生を変え形づくってしまい、その結果として春樹さんが生まれたという事実。そしてそれは世の中全体に言えるということ。「おそらく僕らはみんな、それぞれの世代の空気を吸い込み、その固有の重力を背負って生きていくしかないのだろう。」「そのときの海岸の海鳴りの音を、松の防風林を吹き抜ける風の香りを、僕は今でもはっきり思い出せる。そんなひとつひとつのささやかなものごとの限りない集積が、僕という人間をこれまでにかたち作ってきたのだ。」「しかしその一滴の雨水には、一滴の雨水なりの思いがある。一滴の雨水の歴史があり、それを受け継いでいくという一滴の雨水の責務がある。」短いので一瞬で読めてしまうのだけど、閉じてから戦争とそれがつくった人生について、考えずにはいられなかった。
- チカ@cicalata2025年4月3日読み終わった知り合いから、この本にある村上春樹の父親についての話を聞いて、興味が湧き読む。 私も父と疎遠なところがあり、直接細かい話を聞いている部分が少ない。記憶や時間が失われる前に、聞きたいことを聞いておかなくては、と思っているけれど、実際根掘り葉掘り聞くことはできないんだろうなと思い浮かべる。 家族でも、経験を全部語り継ぐことはできないし、親しくしていても知っているつもりでも知らないことが多いことを意識する。 ペラペラのレジュメでいいから、家族の遍歴を残しておきたいと思う。 戦争のことも、また意識をする。
- 夏しい子@natusiiko2025年3月8日かつて読んだあったことをあったままに書いただけでは伝わらないだろう事を 多少、具体性に欠けてでも調べた事と憶えている事とで 書かれているからこそ、深く伝わってくる。 そんなエッセイだった。 「僕もこの世界には存在していなかったことになる。」 この繰り返しは父を無視したり父や母の辿った生き様を見ない事にして 自分は無いというを今やっと、文章を書きながら対峙出来た という事なのかなと思えた。