綾鷹 "食べたくなる本" 2026年4月29日

綾鷹
綾鷹
@ayataka
2026年4月29日
食べたくなる本
さらっと読んだ。 ・他人がなにをどう作りどう食べているかを知ると、とうぜんながら、「おいしい」のかたちが千差万別であることにしみじみと思いいたる。そして、自分がふだん「おいしい」とか「おいしくない」という場合のその基準など、この世界に存在する無数の基準のなかのほんの一つにすぎないということに気づかされる。そのことを貴重だと思う。なにか、肩の荷をおろしたような、ほっとする気分にさえなる。それはつまり、自分が抜き差しがたく囚われている「習慣」の狭さに気づき、それを相対化し、ほんの少しだけ、その囚われから解放されるきっかけを与えてくれるからではないか。これも料理の本を読む理由と言えるだろう。いろいろな「おいしい」を知って身軽になること、優しくなる こと。 ・いささかこじつけかもしれないが、私が料理の本に没頭したいと思う理由を、そこから、こんなふうに言い換えることができるかもしれない。つまり、私はさまざまな本のなかに入っていくことで、自分が浸っている世界から一時的に離れ、本を閉じたあとは、またこの世界に戻る。こんなふうに、「元天使」の新鮮な感覚を取り戻そうと望んでいるのではないか。だから、私は料理の本に惹かれる。 この本が目指すことは、したがって、料理の書物をつぎつぎと渉猟しては知識を蓄えて食通になることなどではもちろんない。それはきりがないことだ。むしろ、いろいろな本のあいだを漂いながら、自分に取りついている習慣の重みをほんの少し忘れられればいいと思う。あのベルリンの元天使が、街角のコーヒースタンドのなんの変哲もないホットコーヒーを飲んだときに覚えただろうあの幸福を、日々の食卓に取り戻すこと。それが望みなのだ。
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