
トロ
@tontrochan
2026年4月30日
世界99 下
村田沙耶香
読み終わった
@ 自宅
こんなに読むのが苦痛だった小説もなかなか無いかもしれない。
最初に抱いた所感は「上手く逃げおおせたな」でした。反転すると「あんなに安全と安寧のために世界に使われる事を避けてきたのに、やはりそちらを選ぶのか」という皮肉にも直結するんですけどね。
世界に順応している内に疲弊していき、瞬間的に他人の生活レベルや立場を品定めする。「感動」や「かわいそう」は娯楽になり、感情も表情も個体差を排除され均一化していく。
記憶はマジョリティこそが正しく画一化され、場合によっては改竄されて、都合よく切り離される。
ただ、主人公と白藤さんが見た雨の日だけは改竄されていなかったと信じたいです。空が断絶されたような世界の中で、二人の立っている位置が違っていたと記憶しているので。
終始、大仰で突飛なテーマではあったけど、日常的に声に出さないだけで今を生きる人類には主人公の動向に思い当たる節があるんじゃないかな、読みながら気付く事が多かったです。
村田先生の描く男性は、男性である事をとことん追求して煮詰めたような人しか出てこなかったので、やはりしんどかったです。
消費されて使い捨てされる人生になってしまった事が幸せなんだと思う穏やかな気持ちと、えも言われぬ喪失感でいっぱいです。私という個人の価値観が細切れにされて、バラバラになって目の届かない場所に浮遊している。
気持ち悪っ…という気分が晴れなくて心が沈んでいくようです。物語の中の言葉を借りるなら、今確実に「アップデート」しているのに、エラーが出てるような状態なんだと思います。



