

トロ
@tontrochan
伊坂幸太郎ばっかり読んでます。
- 2026年2月7日
方舟夕木春央読み終わった読み終わりました。 いやぁあ、後味が悪いですね。。一人一人の一挙手一投足に目を凝らして頭で整理しながら読んではいましたが、この事件に置いて「動機はそれほど重要ではない」と刷り込まれていた為に、本当の種明かしまでその理由に思考を割くことが出来ないでいました。逆でした。殺人を犯すには、必ず動機が必要なんでした。私怨でも金品目当てでもないなら、次に来るのは保身。七日間ずっと、犯人の手中にいたことになります。助かるためには、誰か一人犠牲にならなければいけない。この根底がそもそも逆だったら?犯人以外を犠牲にしなくてはいけないなんて思って読む人はいないと思います。 クローズド・サークル&タイムリミットがあるミステリーには初めて触れましたが、なかなか新鮮で楽しめました。 - 2026年2月5日
読み終わった読み終わりました。『殺戮にいたる病』の後遺症が思いのほかひどく、しばらく読書は控えようかと思っていた頃にお勧めされて読み始めました。 読み終えた後は「うーん」と唸ってしまいましたが、『殺戮にいたる病』を読んで初めての小説であり、叙述トリックであると知っていたので、読みながら薄々物語の核心に至らないまでもおおよその展開には気付き始めていました。なので驚きはそんなになく。意味のない描写や登場人物は有り得ないと思っていたのでそれにも助けられました。オチとしてはやや弱かったというか。『それを○○と呼称するのは無理がないか?』と消化不良ではあります。 何故主人公は今こうしているのか、そういう心境になった原因は何故なのか。何故、そういう考えに至ったのか。昏く永い人生の中でこの思考に到達する人がどれほどいるのか、改めて考えさせられました。登場人物に自分と重なる事があって少し泣いてしまったのですが、果たして自分は老いて尚、その思考に到達する事が出来るのか、恐くもあり少し楽しみでもあります。
- 2026年1月30日
新装版 殺戮にいたる病我孫子武丸読み終わった徹夜して読み終わりました。最低な気分です。 読み終わった後は天を仰いでしばらく放心してしまいました。こんな生々しい筆致で、かつ読者の認知の初期値を固定して、そこから更新させない技術があったなんて、今でも悪い夢を見ていた気持ちです。アンカリング効果と確証バイアスが自然と読者の心理に作用して全く予期していなかった最後に、お手上げ状態です。思えば、三人視点の内、二人が心理的に受け付けないと思っていたんですが、それも、読んでいる私自身【息子がいる母親という立場がある】から、過剰にそう思ってしまったとも考えられます。 倒叙ミステリーなので、いかに犯人が追い詰められるかを楽しみにしていたんですが、物語が内包する歪さと犯行の手口、自己中心的な動機と心理が浮き彫りになるにつれて、私は早く解放されたいって気持ちが逸って、着実に積み重ねられていた違和感に蓋をしていたんだと思います。 本当に気持ち悪い作品ですが、見事、としか言えません。ある人に読み返さないのかと訊かれてこんなおぞましい内容を何度も読んでたまるかと思いましたが、あの時もあの時も、最後の最後まで騙されていた私なので違和感を払拭したいと思ったら、或いは、もしかしたら…読み返す日が来るのかもしれません。
- 2026年1月29日
新装版 殺戮にいたる病我孫子武丸借りてきた読み始めたオススメされて読み始めました。今まで伊坂幸太郎作品ばかり読んでたので、だいぶ毛色の違った作品。三人称一元視点で読みやすい。テンポもいい。起きた記録を淡々と描写される。 86Pまで読みましたが、猟奇的な表現を淡々と描写されてて、こちらの心の機微をひたすら逆撫でされます。登場人物三人の視点ですが内二人が受け付けない人種なので、胃が締め付けられるような気持ちになります。例えば映像は良くも悪くも脳に記録として転写されてるだけで、尚且つそれが創作だって分かってるし作り手の意図はそこまで関係ない。ある意味での思考停止。後でああだったこうだった、って考える頃には記憶も薄れて全く別物になってるなんてこともある。でもこれは文章だから、こちらの想像力が試されてるような気持ちになるし、この考えに到達した書き手は現実に存在してる。生々しいとか真に迫るとかもあるけど、これを想像しながら書いて、伝えることが出来る人間が存在しているのは確かなのがとても恐ろしいし、ひたすら気持ち悪いです。ミソジニー的な表現もキツいですが、筆致自体はとても好みで読みやすいので、現状の評価としては総じて最悪(※賞賛)です。
- 2026年1月28日
さよならジャバウォック伊坂幸太郎読み終わった買った258Pを読み終えた時点で「まさかまさか」「嘘でしょ」と焦りながら読んで、全て読み終わりました。AIやテクノロジカルシンギュラリティなど、もはや身の回りに無くてはならない題材が使われていた分、ジャバウォックというのは私達の近くにいてもおかしくないと思いました。 他人と過去は変えられない。自分と未来は変えられる よく見聞する文字の羅列ですし、それでこそ今は右から左に流されがちなテンプレな文ですが、心に留めておきたいです。 伊坂先生の描く小説に登場する人物には、必ず役割が与えられているので今回もアンテナを張って、注意深く読んでおりましたが、まさかあの人があんな形で…言われてみればそんな設定あったなぁ…と爽快感を覚えるのと同時に、 徹頭徹尾、自分を試して尚信念を守り抜くのは、世界に絶望して悲嘆して無力だと嘆いても叶うのかもしれない。そう思うと、何だか涙が出てきました。忘れた頃にもう一度読みたい。違和感を確信に変えながら読みたいと思いました。 - 2026年1月27日
さよならジャバウォック伊坂幸太郎買った読み始めた図書館ではしばらく先まで借りられないので購入する事にして、最近やっとこさ手に入れて、昨日から読み始めています。まだ起承転結の起の、本当に序盤なのでまだなんとも言えませんが、作家人生二十五周年を迎えた伊坂先生の待望の新作ですので、丁寧に読み進めていこうと思います。モラハラ夫に言いがかりで暴力を振るわれ、息子に危害を加えられるかもしれないと思い、気付いたら彼を殺害してしまった量子さんの元に大学時代の後輩、桂凍郎が訪ねてくるところまで読みました。表紙は、【約束のネバーランド】の作者である出水ぽすか先生が担当されてるそうです。可愛いタッチですが、作中で量子さんが「思考がひっくり返したスノードームみたいに散らばる」「私はそこで溺れる子ども」だと自らを喩えているので、そういう絵なのかな?或いは、これがジャバウォック?と色々考察しがいがある絵だと思ってます。返信にネタバレや感想を書いていくので、未読の方はご注意ください。
- 2026年1月22日
フーガはユーガ伊坂幸太郎借りてきた読み終わった家に居場所が無く実の父親の虐待と暴力にさらされる双子──風我と優我。幼少期に一種の特殊能力に目覚め、それを使って二人で色んな難局に立ち向かっていきます。時には理不尽で凶暴な悪意の巣窟みたいな展開にぶち当たりますが、双子の絆と信頼でこれらの困難を踏破していきます。それも偏に、中学生時代にささくれのように心に引っかかっていたとある事件があるから。それが二人の正義感や人格形成に大きな影響を与えています。環境と分岐の残酷さが、これでもかと描写されていて、なんとなくやるせなくなります。かなり重たいテーマではありますね。生まれた場所と大人の都合が、いかに子どもの人生に影響を与え、狭めているのか、読者に投げかけているようでした。 風我と優我は双子なので、普段から登場人物同士のやり取りが軽妙でポップな印象が強い伊坂先生作品の中では群を抜いて面白かったです。とは言え、大人が子どもを虐げたり、危害を加えるシーンはそれなりに刺激が強いので、少し気分が悪くなるかもしれないです。心に余裕がある時に読んだ方が良いです。が、読むなら一気読みして欲しいです。このカタルシスはちょっとクセになります。 背表紙にも書いてあるんですが、"風我(Whoが)は優我(Youが)"というのは、物語の根幹を示す大切な意味合いがあります。これは、双子だから名前が似てるとか安直な帰結ではなく、伊坂先生ワールド炸裂なセンスだなと、読んだ後にじーんとしました。 - 2026年1月13日
マイクロスパイ・アンサンブル伊坂幸太郎借りてきた読み終わった殺し屋シリーズを読み終えたので、原初に立ち返って短編集から伊坂先生の作品を読破していこうと思い手に取ったのがこちらでした。なんとなくタイトルの響きも気に入りました。登場人物は主に二人いて、周りから虐げられて、スパイに助けられ、スパイをしている少年と、就活中に彼女にフラれてしまった僕【松嶋】の7年に及ぶ人生が交錯し、リンクするお話です。戦闘シーンはありますが、めちゃくちゃ派手ということはない印象でした。とは言え伊坂ワールド全開なのは変わりません。期待してもいいと思います。 作中の人物は皆、時々歌を口ずさむ《合唱/アンサンブル》のですが、この歌にもちゃんと意味があります。あとがきを読むと、これは面白い構想だと感心しました。 《僕の大好きな あのヒトが しあわせだったら いいな》 という歌詞があるんですが、とても優しい気持ちになれました。知らない間に、意図せず、無意識に、今やってる事は、どこかの誰かの助けや救いになっている。人は意識して誰かを助けようとしなくても、実は色んな要因を得て助けられている。絶望する状況や、愕然とする事態に直面する事は人生でたくさんありますが、悲嘆せずに前を歩くお手伝いしてくれる。運命とすれ違いと、ささやかな救いが題材だと言えると思います。そう信じてもいいかな、そう信じたいな、と思える一冊です。 - 2025年11月27日
777 トリプルセブン伊坂幸太郎借りてきた読み終わった【マリアビートル】で大活躍した【天道虫】こと【七尾】君が主人公の殺し屋シリーズ第四弾です。ずっと読みたかったので図書館で借りた日は特に鼻息を荒くして読みました。相変わらず仕事を斡旋する【マリア】から簡単なお仕事だよ、と言われて仕事を請け負うのですが、やはり簡単に済ませて帰らせてもらえない七尾君。今度の舞台は東京の超高級ホテル。登場する殺し屋も、過去最多です。驚異的な記憶力を持つが故に殺し屋達に狙われることとなった【紙野】。彼女を狙う【乾】。その乾から紙野を殺さずに捕えろと命じられる"スイスイ人"である容姿端麗な六人組の殺し屋。過去に凄惨な事件で活躍し、世間から賞賛される政治家・【蓬長官】。爆弾を使う二人組の殺し屋【コーラ(高良】と【ソーダ(奏田)】。似たような境遇を持つ同じく二人組の殺し屋【モウフ】と【マクラ】。二人組の殺し屋は【マリアビートル】に出ていた【檸檬】と【蜜柑】を想起しました。伊坂先生は二人組の殺し屋が好きなんですかね! アクションシーンも多く、表現も多彩で、とても興奮しました。新幹線に比べればできる事は多く、遮蔽物や階段、エレベーターや各個室の小道具を使って七尾君は戦っていく事になります。閉鎖的な空間で誰が敵で誰が味方か分からない。且つ、各パートは同時進行ではないので次のページでは誰かが倒れてしまっている状況はまさに、手に汗を握りました。マリアビートルを読んでいなくても楽しめると思いますが、七尾君の不幸体質がいかに本人の制御不能であるのか、いかに仕組まれたかのように連続するのかを知っていると、より楽しめると思います。 777とはつまり、ジャックポットです。それが揃うのはとてつもない【運】です。その運に支配されながらも、人は選択し続けなくてはいけない。七尾君は選んだ先から不幸に見舞われるのである意味対極なテーマかもしれません。でも、時には強い執念や、ひとつの信念を貫きさえすれば777は揃うのです。前作【AX】の兜にも通じる考えが、この本には詰まっていました。核心に触れてしまうのであまり書きませんが、今までの殺し屋シリーズに比べると一貫したテーマが物語の根底にあります。「リンゴはリンゴになればいい」という台詞があるんですが、この何気ない発言を最後まで覚えていると、伊坂先生ならではの驚きと感動を刻み込まれると思います。 - 2025年11月11日
AX アックス伊坂幸太郎読み終わった買った『グラスホッパー』『マリアビートル』に次ぐ殺し屋シリーズの続きが読みたくて買いました!最強の殺し屋【兜】は、自宅では恐妻家。奥さんが怖くて夜食にカップラーメンも食べられません。包装を破く音、お湯を注ぐ音、麺を啜る音、どれで奥さんが起きて怒られてしまうか分からず、魚肉ソーセージを小動物のように食べるのです。この掴みの導入は、なかなかどうしてクスッとさせられます。 殺し屋という非日常的な設定でありながら、「夫であること」「父であること」という、とても日常的な役割を描いた作品です。兜は仕事では完璧ですが、家庭では不器用で、前述のカップラーメンを息子の【克己】が食べていると「そんなものばかり食べるんじゃない」と言いたいのに、そこに奥さんがいたら「じゃあ私にもっとちゃんとしたご飯を作れって言いたいの?」と言われる気がして、しいては自分が殺し屋をしているせいで家族を不健康していると責められる気がして言い出せません。もっと強く出てもいいのに、と克己に言われるシーンがありますが、読者の大半もそんな気持ちになるのではないかと思います。そしてこんなシーンが山ほどあるんですから、そのギャップが、物語に静かな緊張感を与えてくれます。それが一種の中毒のように、次へ次へとページをめくらせるのです。合理的に考えれば正しくても、人としては選べない道がある局面があり、そのとき兜は、効率ではなく、感情や信念に従います。そこに、この作品の核があると思います。また、強さとは何なのか。敵や障害を倒す力ではなく、守ろうとする意志。従うことではなく、自分の基準で決めること。人にはそれぞれ理由があって、今この場にいる。数多の選択の果てに、この道を選んだこと。それが後半、えも言われぬ爽快感となって気持ちの良い読了感に包まれました。人の縁ってこんな形で繋がるんだ、と優しい気持ちになれた気がする一冊です。
- 2025年10月13日
グラスホッパー (角川文庫)伊坂幸太郎読み終わった伊坂幸太郎作品の中で、私が殺し屋シリーズを好きになったきっかけをくれた作品です。 元教師の鈴木は、ある日最愛の妻を轢き逃げされ、亡くしてしまいます。復讐を誓い、その犯人・【寺原長男】に近づく為、裏社会に足を踏み入れ、虎視眈々と復讐の機会を狙っていましたが、ある日その忠誠心を【殺人をすること】で試される鈴木。懊悩する鈴木の目の前で、寺原長男は【押し屋】という殺し屋に殺されてしまいます。あまりにもあっさりと、復讐の機会を横取りされてしまうんです。その後【押し屋】を巡って、ナイフ使いの【蝉】、相手の目を見ただけで自殺させる【鯨】という殺し屋も絡んできて、この二人が出てきてからの疾走感はさすが、伊坂先生でした。私は後に発刊された【マリア・ビートル】を先に読んでいたのですが、一見陰惨なテーマでありながら殺し屋達は個性豊かで、どこか人間くさく、【蝉】と彼に仕事を斡旋する岩西の絆と呼ぶには少し気恥しいような関係には思わず唸ってしまいました。伊坂先生はあらゆる所に伏線を張り巡らせ、後半で一気に回収していく作風が特徴なのですが、これはまさかあの時の会話まで?そんなことまで伏線だったの?とかなり驚かされました。孤独相から群集相になった時、バッタはその環境に適した姿に変異する。"グラスホッパー"とはその異常行動をなぞらえたメタファーだそうですね。押し屋を巡る物語は個々で動いていますが、やがて集団のようにうねって、それぞれの性質さえも変えてしまう。なかなかに洒落たテーマだとまた唸っていました。 - 2025年10月6日
マリアビートル伊坂幸太郎読み終わった舞台は東京発、盛岡行きの東北新幹線の車内。殺し屋の【天道虫】はとあるトランクを盗んで降りるだけの簡単な任務を請け負ったはずが、持ち前の不運の連続で降りることが出来ません。車内には息子に危害を加えた中学生に復讐を決意する【木村】、そのターゲットである悪魔のような中学生【王子】、双子のようで正反対な二人組の殺し屋【檸檬】と【蜜柑】、主にこの三組で織り成すクライムフィクションです。伊坂先生には珍しく、全く好感の持てない悪人(=【王子】)が出てくる作品だと思います。不条理で理不尽な話が続き何度か胸が苦しくなりましたが、怒涛の展開から目が離せず、噛みつく勢いで読んでました。この物語の好きな点は、まず何よりも「偶然が必然の顔をして歩いてくる」ところにあると思います。新幹線という、ただ前に進むしかない鉄の箱の中で、無関係そうな人間達が、実は同じ運命の糸にくくりつけられている。後に前作のグラスホッパーで名前が出ていた他の殺し屋や、登場人物が出てくるので、先にそちらを読んでいたらこのスターシステムは嬉しくなる布陣だと思います。そちらの備忘録にも書きましたが、殺し屋達は人間臭く、プロだけど失敗もするし、暴力的な状況下でもテンポのいい会話をしてくれます。【天道虫】こと【七尾】君は負のピタゴラスイッチみたいにカチッとハマるタイプの不運を日々、体験しています。あらゆる神の加護を打ち消しているのではと思うくらい、自他ともに認める不幸体質で、傍目から見ていればとても気の毒なんですが、本人は気付いていないだけで要所要所で救われていたりします。 時に、私は【きかんしゃトーマス】を知らなかったのですが「ディーゼルは悪いやつ」というのは、この作品のおかげで、一生忘れることはないと思います。一応、ブラッド・ピット主演の【ブレット・トレイン】も観賞しましたが、題材を借りた別物でしたので、そちらはお勧めしません。 - 1900年1月1日
バイバイ、ブラックバード<新装版>伊坂幸太郎読み終わったちょっと開いた五股をしている主人公・星野が縦にも横にもデカく色々と規格外な女・繭美と二ヶ月間行動を共にし、とある理由から【あのバス】に乗る前に五人の彼女たち全員と別れるというストーリーです。繭美はマツコ・デラックスさんみたいな方を想像しながら読んでました。まさに歯に衣着せぬというか、そういう発言がポンポン出てくるイメージです。はじめはおっかなびっくり接していた星野も、繭美の傍若無人としか言える言動を浴び続けて、それこそ作中で【猛獣】と形容される彼女の扱いに慣れてきて軽妙なやり取りを繰り広げる姿は伊坂先生独特の世界観が好きな方には必見です。 五人の女性は全員タイプが違っていて、星野は全員を愛していました。憎たらしいのが、星野は一人が本命で後の四人が浮気───というわけではなく、まさに全員と真剣交際だったとのこと。星野とどう出会い、どういう交際をし、どう別れるのかを時には苛烈に、時には緻密な描写で物語っていきます。どの女性も、開口一番別れて欲しいと訪ねてくる星野に「あれは嘘だったの」と問い掛けるシーンから始まるのが、この作品の軸だと思います。ブラックバードは不吉な鳥、不幸の象徴。それにバイバイ、さよならをする話がどう着地していくのか。伊坂先生独特の、軽快でポップな作風が凝縮されている一作だと思います。個人的に、五人目の女優の彼女との話が一番好きです。 余談ですが、読了後、太宰治の未完の遺作・【グッド・バイ】のオマージュだとあとがきで知りました。なるほど、恋多き太宰治という作家を投影した星野というキャラクターはこの物語に最適だったと、なるほどねぇー、と感嘆した次第です。読了後は、ほとんどの人が繭美を好きになるんではないでしょうか。 - 1900年1月1日
終末のフール伊坂幸太郎読み終わったかつて読んだ学生時代に初めて読んだ伊坂幸太郎作品。ただ、当時は最後まで読んでおらず、ここ最近Netflixでドラマ化すると知り、観る観ないは別にして久しぶりに読みたくなり、かなり久々に読み始め、読了したので備忘録として感想を書き留めていきたいと思います。 とは言え、オムニバスなので好きな話を一つだけ。私は籠城のビールが一番好きです。八年後に小惑星が地球に落下すると知らされ、どう生きていくかを題材にした八つのエピソード。最初の方に収録されているので余計記憶に刷り込まれているかもしれませんが、妹を自殺に追い込んだメディア・その中心にいたアナウンサーの家に兄弟二人が拳銃を持って押し入り、籠城する話。伊坂先生は追い詰められた人とそれを扇動、或いは直接原因を作った人の見えざる悪意を描写するのが本当に上手い。やるせない気持ちと、家族や兄弟であれば遮二無二復讐するだろう、それが当然だと言われれば確かにそうだと思わせる謎の説得力がありました。穏やかな食卓に反して殺気を纏う兄弟。でもその意図を知った時、二人と妹の間にあった台詞が、心を熱くさせます。時間がない、猶予がないからこそ、生きるとは何なのか、残された時間の有意を問われた気持ちになりました。お勧めです。
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