
ハヤシKYヘイ
@heiheikyo1
2026年4月30日
アニータの夫
坂本泰紀
読み終わった
2001年に発覚した青森県住宅供給公社巨額横領事件に関する本。
いわゆる「チリ人妻」に入れあげて14億円を横領してしまい逮捕、刑期を終えた現在の男性を取材した前半部と、
チリにプール付きの豪邸を建てたアニータが現在地元でお騒がせタレント的な地位を築き、色んなビジネスに手を付けつつ9人の子供を育てている、などの情報も詰まった後半部から構成される。
とにかく、なんで14億円も!? と不思議で仕方ない。が、そこは本を読んでもけっこう不思議なまま。
男性はアニータにメロメロだった、というわけでもなく、アニータの前に別のスナックで知り合った女性への貢物などで借金をして最初の横領をし始めていたし、アニータの度重なる送金の催促に不快感を募らせていた。
公社のずさんな管理体制をいいことに、
「アニータがせがむもんだから金を送るしかなかったんですよ」
みたいな感じだったらしい。
貢がれた大金で豪邸を建てたり華やかな方へと邁進し続けるアニータの動きは、いわば細木数子的な文脈で解釈可能だし(ちょうど同時期にネトフリドラマの『地獄に堕ちるわよ』を見ていた)、あけすけな物言いでスカッとする! と支持する声も多いらしい。
ただ横領していた男性の当事者性の薄さというか、主体性が希薄な感じが、どうにもピンと来ず、不思議な感じだった。(やはり同時期に鑑賞した映画『マーティ・シュプリーム』的なクズ男の)その場しのぎの必死さ・きらめきみたいなものは皆無で、個人的にはさっぱり惹かれない人物だが、それだけいっそう、なぜ14億円も? の問いに立ち返る。
ジェンダーの非対称性がなければ起きない構図である。
その二人の人間がたどる顛末もまた、ジェンダーの非対称性によるものなのか、あるいは個人の資質によるところが大きいのか。
果てしない欲望の引力と、満たされない器の空虚さが偶然共鳴し増幅した結果なのか。
膨大な取材を結集した本書を読んでもよくわからないし、理解を超えた人間の底知れなさが面白かった。


