アニータの夫
69件の記録
いちのべ@ichinobe32026年5月17日読み終わった千田が刑務所ののど自慢大会で「酒と泪と男と女」を歌った、という話をXで見かけて「エピソードが強すぎる!」と気になっていた本。面白くて一気読みだった。 事件自体は当時めちゃくちゃ話題になったから知っていたものの、そこまで興味を持ってなかったから、「アニータが原因で横領した」という印象を持っていた。 千田がアニータに出会う前から、別のスナックのママに資金援助して借金して横領に手を染めていたことを、この本ではじめて知った。 前半、千田の目線で語られる経緯はどこか「都合の悪いところを端折ってそう感」があるし、千田がアニータに宛てた手紙の自己陶酔してる感というか妙なエモーショナルさが不気味。 そして後半に紹介されるアニータの目線での経緯も、全面的に信じることははかなか難しく、結局それぞれにとっての「真実」がそうなんだね〜ということしかわからない。現実って、人間ってそういうものだよな。 > また、千田が検察官に対し、「金や物を出さずに、どうすれば愛や友情を手に入れられるのか、私には分かりません」と供述していた(後略)(p98) > 彼女は、彼女の世界で、楽しくやっていたのかもしれない。それなのに、俺は、弱いものを救いたいと思った。アニータを救うことでなんかヒーローになりたいなって思いもあったのかもしれない。正義というより自己満足に近いかもしれないよね。(p122-123) > 津軽に「さんふり」という言葉がある。「えふり=いいカッコすること」、「あるふり=金を持っているふりをすること」、「おべだふり=博識ぶること」といった三つの気質のことで、要は、何ごとにつけて見えっ張りでかっこつけ、ということだ。(p180) 千田本人も語るとおり、「人間関係とか、人間が生きていく中で一番大切な部分が足りなかった(p122)」というのが根本的なところにあるのかな……と読んでいて感じた。 その感覚を補強する『碧い瞳のエリス』のエピソード、そして表紙のアニータの瞳が碧い意味に読み終えてから気づくことができる装丁も素敵だ。 チリ本国の人々のアニータに対する評価や、彼女が今取り組んでいる活動・新たに始めた活動も初めて知るもので、驚き、興味深かった。 肯定できない面は勿論あるが、養子を含む9人の子どもの母として、様々な手段で日銭を稼ごうとする「母」としてのアニータの努力はすごいなと思ってしまう。 この言葉が心に刺さった。 > 「アニータをどうとらえるかで、自分の価値観があぶり出される。チリで、自分自身のポリコレ(ポリティカル・コレクトネス、政治的正しさ)が試される存在。それがアニータなんです」(p213)
読谷 文@fumi_yomitani2026年5月4日読み終わったまず装丁がすごくお洒落で、目を惹く。 南米を思わせる力強いアニータの顔の絵に比して、タイトル・著者名がシンプルで強めなゴシック体で配置されている。 他には何にもない。 なんて潔い表紙なんだ。 真四角に配置された帯の文字は、アニメのルパン三世のタイトルみたいに、タイプライターの打鍵音が聞こえてきそうだ。 本文を読むに、千田はなぜ横領に手を染めたのか? 二度の離婚歴があり自身の家庭がなく、職場では天下り役人が幅を利かせていて出世は望めない。通っていた将棋道場も、賭け将棋をしたことによりやめてしまう。 そんな虚しい日々を送る中でスナック通いを始めて、消費者金融への借金返済が横領のスタートだったそうだ。 成果を上げても報酬に直結しないことが多い公的職員の報われなさゆえの横領は、実はあるあるだと聞くが、千田の場合はそれだけでもなさそうである。 金や物を与えないと愛を得られないと本気で信じていたようだし、あくまで虚構を誇張している歌謡曲の世界観を、現実の世界も同じだと真に受けている節がある。 千田によるモノローグは妙に自己憐憫まみれで臭すぎるし、アニータに宛てた手紙の文面も謎に上から目線で偉そうで、気持ちが悪くて仕方がない。 筆者曰く「千田は物事のコツを掴む特異な才能がある」とのことで、それゆえに複雑怪奇な公社の会計から莫大な額の横領を成し得たのであるが、人間の心の機微についてはまるで何もわかっていないように思う。 自分でも世間知らずという自覚はあったようだが、アニータから明らかにATM扱いされていて、度重なる金の催促に酒を飲まないと寝られないくらい悩まされていたにもかかわらず11億も与え続けたのは、盗んだ金を貧しい人々に配って回る石川五右衛門気取りの、薄っぺらい自己満足にすぎない。 千田は、公務員で釣りや山菜採りに長けていた父親を尊敬していたようだが、自分自身の人生の虚しさを自らの手ではどうすることもできずに、横領した金で実現しようとしていたように見えた。 (追記) 余談になるが、ここだけの話、本書読了後にメルカリで出品したら青森の方が買ってくだすって、余計に味わい深かった。 やはり読者の中には青森県の方が多いのかしら……?


ハヤシKYヘイ@heiheikyo12026年4月30日読み終わった2001年に発覚した青森県住宅供給公社巨額横領事件に関する本。 いわゆる「チリ人妻」に入れあげて14億円を横領してしまい逮捕、刑期を終えた現在の男性を取材した前半部と、 チリにプール付きの豪邸を建てたアニータが現在地元でお騒がせタレント的な地位を築き、色んなビジネスに手を付けつつ9人の子供を育てている、などの情報も詰まった後半部から構成される。 とにかく、なんで14億円も!? と不思議で仕方ない。が、そこは本を読んでもけっこう不思議なまま。 男性はアニータにメロメロだった、というわけでもなく、アニータの前に別のスナックで知り合った女性への貢物などで借金をして最初の横領をし始めていたし、アニータの度重なる送金の催促に不快感を募らせていた。 公社のずさんな管理体制をいいことに、 「アニータがせがむもんだから金を送るしかなかったんですよ」 みたいな感じだったらしい。 貢がれた大金で豪邸を建てたり華やかな方へと邁進し続けるアニータの動きは、いわば細木数子的な文脈で解釈可能だし(ちょうど同時期にネトフリドラマの『地獄に堕ちるわよ』を見ていた)、あけすけな物言いでスカッとする! と支持する声も多いらしい。 ただ横領していた男性の当事者性の薄さというか、主体性が希薄な感じが、どうにもピンと来ず、不思議な感じだった。(やはり同時期に鑑賞した映画『マーティ・シュプリーム』的なクズ男の)その場しのぎの必死さ・きらめきみたいなものは皆無で、個人的にはさっぱり惹かれない人物だが、それだけいっそう、なぜ14億円も? の問いに立ち返る。 ジェンダーの非対称性がなければ起きない構図である。 その二人の人間がたどる顛末もまた、ジェンダーの非対称性によるものなのか、あるいは個人の資質によるところが大きいのか。 果てしない欲望の引力と、満たされない器の空虚さが偶然共鳴し増幅した結果なのか。 膨大な取材を結集した本書を読んでもよくわからないし、理解を超えた人間の底知れなさが面白かった。


- 散水夫@eachs_sansui2026年4月7日読み終わった抜群に面白い。ノンフィクションでは一番だと思う。 アニータに出会ってしまったのが運の尽き…といいながら、アニータの夫は金を使いまくることをやめなかった。 良心の咎めなく、「自分が稼いだ金じゃないから、どうなってもいい」と、無意味な送金を続けた。アニータと出会う前からやっていた横領も、散財も、逮捕される直前まで、警察から逃げながらもやめなかった。 アニータはきっかけに過ぎなくて、結局、青森の良家に生まれたのが運の尽きなんだよ…。

おたふく@otahuku22032026年3月30日読み終わった@ ファミレス読み終わった! なにか学びがあるという本ではないけど面白かった。 金配りおじさんと化する千田の中にどんなに頑張っても上に上がれない公社への不満があったという部分ではわからんでもないなと思ってたけど、アニータを不審に思うタイミングがそこなのか?という全然共感できない部分もあり、掴みどころなかった。 アニータはしたたかではあるけど、千田さえいなかったらこんなことになってないだろうし、お互いにとって最悪な相性だったんだろうな。


- Kiiimuuugeem@kiiimuuugeem2026年3月30日読み終わった千田とアニータの生き様の高低差に目眩がしたけど、あの時チリの空港で引き返していればと自問している割にその時も(たぶん)横領した金でファーストクラスでチリに行っとったんかいみたいな、みんなが自分の「真実」を語り読者は煙に巻かれ真相は藪の中な平成民話。





Eunuch@Eunuch2026年3月29日読み終わった25年前に起こった14億円超の横領事件のルポルタージュ。青森の公社職員だった千田郁司は現在68歳。少しの逸脱が修正不能になるさまには、少し共感する。その縮小版は日常に潜んでいるからだ。読後感は『対馬の海に沈む』(窪田新之介)に似ている。




Matilde@i_griega_20252026年3月18日読み終わった全然わからない。 彼の欲望が見えないというか、自分の人生を生きてない感じ。 語る言葉が薄っぺらくてうそくさい。 たとえうそを並べ立てた手紙であってもアニータの方はまだ理解できるけれど、千田の手紙は全く頭に入ってこない。 なんなんだろう…彼に感じるこの違和感をうまく言語化できなくて悔しい。


- Ario Kawauchi@Ario10092026年3月16日読み終わったアニータ事件のその後。くっきり明暗が分かれた二人だが、タガが完全に外れてるという意味でどこか似た部分もあったのだろう。今はチリにいるアニータは横領で貢がされら10億円をすっかり使い果たし、本国チリでタレント活動をしてることには驚いた。
どくしょ@kkfm03072026年2月8日読み終わった本が出る情報を見て、朝日新聞デジタルの連載とWikiを読み込んだ。この事件を全然知らなかったのです。 アニータの夫・千田郁司(ちだゆうじ)へのインタビューで構成されるside A、青森とチリで行われた取材で構成されるside B。千田の語りはずっと“さんふり”かつ、嘘があるようで居心地が悪いが、記者の坂本さんに言わせれば“コツを掴むのが上手い男”というのが面白かった。たしかに。魚釣りも、山菜とりも、将棋も、そして横領も人並み以上にこなせてしまった……。 唯一嘘がなさそうなのが歌のうまさというところもおかしくて笑ってしまう。14億円横領男が歌う松山千春の『恋』、聞いてみたいよ。 一方のアニータ、賛否両論ありつつも、カトリックや家父長制が強いチリの中で、自分の性について開けっぴろげに話し、9人の子供を育てるシングルマザーであるがゆえに、時代を先取っているかのようにうつり、一部では強く支持をされているとのこと。いま始めた仕事のこと含め、とても評価の難しい人だ。まさにリトマス試験紙。 総じて、アニータとアニータの夫は、弱きを助けたい / 見栄っぱりという点において似たもの同士のようにも思った。ふたりでうまく悪巧みできたら、夫婦としてはもっと幸せだったのかもしれないけど、結局異性として惚れていたのは千田のほうだけだったというのが悲劇なんですよね……? 千田がスナック通いを始めたきっかけとなった店や、チリでのアニータへの取材もぜひしてほしかったですが、会社員として滞在日数などにも制限があるのかな……と思ったり。 人間の多面性や人生の数奇さについて考えるあとがきも好きでした。ふたりの間に何があったのか……もっと知りたいので、ぜひ取材を続けてほしい!奇しくも雪の降り積もる日に読み終われてよかった。



- 川内イオ@iokawauchi2026年1月30日読み終わった僕が高校生の時、連日話題沸騰たったアニータ事件。もはやなんとなくしかおぼえていなかったけど、この本で改めて全貌を知り、犯人の千田さん(刑期満了)とアニータさん、それぞれが持つ過剰さが掛け合わされて、14億円横領という結果になったと感じた。ふたりの毀誉褒貶も含めて、人間ってほんと面白い。



- きくぞ@kikunojo1900年1月1日買った読み終わった俗に言う「アニータ事件」 2001年に発覚した、青森県住宅供給公社の職員が14.5億円の横領で逮捕。横領した金の多くを、チリ人妻のアニータへ渡していたという、青森県関係者には非常に強く記憶に残っている事件。 横領した千田、妻アニータ、当時の職員や上司、青森の夜の街の人々、チリの人々 事件当日、新聞記者として青森支社勤務だった著者ならでは、当時の雰囲気や記憶もあった上での取材が生きた内容だったと思う。 判決は事実、それぞれの言い分はそれぞれの真実として書かれているが、いったい何が本当なのかはよくわからない。 が、14.5億円の金が横領され、その後公社が解体され、アニータはチリで有名になり、千田は14年の刑期を経て出所している、という事実がある。 おもしろかったー。 いわき信用組合の不正融資事件の報告書も読んだし、JAの横領事件に関する「対馬の海に沈む」も読んだ。 本当にわからない。自分もそんな状況になったら、ここまでいくのだろうか? こわい。



















































