
時間のかかる読書人
@yoko45
2026年5月1日

高校生のための 人物に学ぶ日本の思想史(1)
佐伯啓思,
公益財団法人国際高等研究所,
高橋義人
読んでる
@ 独立行政法人 国立病院機構 埼玉病院
19世紀とは、いわば今日でいうグローバリズムの時代であり、それはまた帝国主義と呼んでも差し支えないのだが、この下で世界の第一等国になってしまう。ところが、それを支えるだけの日本人の精神性、あるいは価値観は成熟していない。殖産工業、富国強兵で国力は促成栽培できたものの、国民精神を促成で変えることはできない。ただただ西洋に認められることだけが価値基準になり、日本人の拠り所になる固有の価値はどこにあるのか、ということにもなろう。日本人が直面する大問題がここにあった。
漱石は、この大問題に立ち向かうのに、大言壮語するのではなく、また、政治の現場へ踏み込むのでもなく、日常生活の中で、自分の生き方、身近な人との関係などを見つめながら、個人として自立し、精神的な安定を求めることを地道に考え小説にしていった。それを彼は「自己本位」といったのは、漱石の小説は、自立のための手段であったからであろう。ただこうした問題は、当時の日本の知識人が多かれ少なかれ共有していた関心事であったと思う。