62yen
@62yen
2026年5月1日
未来散歩練習
パク・ソルメ,
斎藤真理子
読み終わった
とてもよかった。
翻訳者である斉藤真理子氏の推薦文とあとがきもすばらしく、同時代の隣の国の作家の本をいまこのときに読むことができて幸いだ。
翻訳者の名前は本当によく見かけるので知っていたが、作者のことは知らなかったし、そもそも韓国の文学について何ひとつ知らなかった。
この小説は、2026年の白水社の福袋「新春初歩きセット」に入っていた小説で、「散歩」というキーワードからラインナップしたものと思われる。作品との偶発的な邂逅というのはいいものだなとしみじみ思う。
そして、そういう邂逅こそ散歩的だとも感じる。散歩は日常でもありながら旅のようなところもある。作品の中でも、日常の身体的なリズムというのか、とにかく食べものが具体的に出てくる。パン、コーヒー、ラーメン、キムチ、チャーハン、チゲ、その他名前が覚えられないが本当においしそうな韓国料理たち。そして、おいしいと言って食べる。他方、この小説の人物はひとりなのではなく、散歩の途上で人と出会っていく。散歩は、何か新しいことや未来への扉でもあるのだと思う。
未来に向かう現実の捉え方として「練習」という言葉が選ばれていることも、新鮮なことのひとつだった。めずらしい言葉でもなんでもないし、そういうことを言っている人はこれまでにもたくさんいたかもしれないのに、ハッとするものがあった。
「現在と未来について考える人たち、来たるべきものについて絶えず考え、現在にあってそれを飽きずに探し求める人々は、すでに未来を生きていると思った。絶えず時間を注視し、来たるべきものに没頭し、人々の顔から何かを読み取ろうとする人々は、来たるべきと信じるそのことを、練習を通してもう生きているのだ」
もう少し、作者の他の本や、この訳者による韓国文学を浴びてみたいと思った。
