オムロちゃん@ゆっくりレモン "プロジェクト・ヘイル・メアリ..." 2026年5月1日

プロジェクト・ヘイル・メアリー 下
プロジェクト・ヘイル・メアリー 下
アンディ・ウィアー,
小野田和子
上巻を読んだ時点ではいくつか気になっていた点や読みづらさを感じる部分もあったが、下巻を読み終えた今、それらがすべて計算し尽くされた見事な伏線であったと素直に拍手。 まず、現在と過去が交差する時系列について。当初は状況が飛び飛びになって読みづらいと感じていたが、物語が進むにつれて、それが単なる構成の妙ではなく「主人公の記憶が少しずつ戻る過程を読者に追体験させるための演出」だったのだと思い知らされた。読みづらいなどと文句を言ってしまったことを、作者に謝ろう。 また、上巻で「死んだ戦友に対してあまりにもドライすぎるのでは」と感じていたが、その理由も「実は死んだクルーとはほとんど面識がなかった(しかも無理やり乗せられていた)」という真実によって見事に腑に落ちた。最初は「これはよくある自己犠牲の英雄譚ではないのだな」と思わされていたが、蓋を開けてみれば、これは間違いなく胸を熱くさせる本物の「英雄譚」だった。 何より素晴らしいのは、作者が「死」や「別れ」といった安易な感動ポルノに頼らない事だ。ロッキーとの最初の別れのシーンでは、思わずゾクッとして込み上げるものがあった。しかし、そこで過剰に演出を被せてこない。このドライなバランス感覚が逆に物語への没入を高めた、作者への好感度が上がった。 そして、あの結末。物語のオチへ向かう主人公の判断は恐ろしく早かったが、ヘイル・メアリー号に無理やり搭乗させられた理不尽な経緯を思えば、あの決断は必然。遠く離れ、自分をハメておざなりにした母星よりも、苦楽を共にした近場の親友である異星人に愛着が湧くのは当然のことだろう。目の前で救える命があれば手を差し伸べてしまうのが人間だと思う。別れた後も、ヘイル・メアリーの中からロッキーの船を目で追ってしまい、道中を心配し続ける描写も非常にリアルで心に刺さった。 ロッキーたちの母星の歓迎ぶりは本当に手厚く温かかったが、もしこれが逆で、地球人が異星人を迎える立場だったとしたら、あんなに平和な結末にはならなかっただろうと思い、異世界人への強い憧れを感じた。理想ってそうだよね。 全体を通して、本当に面白く、あの終わり方は個人的に満足。 ただ最後に一つだけ言わせてほしい。地球では、プロジェクトを完遂させたストラットが「悲しいけど責任を持って彼を送り届けた使命感ある女」みたいな顔をしているのたが、俺はカスだと思う。
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