あるく "祝宴" 2026年5月2日

祝宴
祝宴
温又柔
成功したビジネスマンである還暦過ぎの台湾人明虎が、娘の瑜瑜のカミングアウトに葛藤する話。 瑜瑜は日本育ちで優秀な娘だが、学校のいじめをきっかけに自分のアイデンティティに悩み始める。どんなに上手に日本語が喋れても、日本人じゃない。正常じゃない。パスポートを見た人に、中華民国という国などないと言われる。そう言う人は、パパみたいな人には言わない……。 未婚のまま30代半ばを迎えた瑜瑜に対し、父である明虎は当初このまま自分たち夫婦の家にいていいんだよと告げるつもりだった。次女が先に結婚したことを気に病んでいるのだと思っていた。しかし、瑜瑜は結婚したくないのではなくできないと言う。そして、パパとママにかのじょのことを内緒にできないと。 明虎は瑜瑜のカミングアウトを「ふつう」でないと受け止めきれなかったが、彼自身も義父に外省人であることを理由に当初結婚を反対されていた身である。日本、台湾、上海。激動の戦後を生き抜いた異なるルーツが交わり、家族になり、また新たな歴史を紡いでいく。 明虎はマイノリティから必死に働いていまの地位を得た成功者だ。だから余計、瑜瑜のカミングアウトが自分に背いたと感じたのだろう。 けれど彼は、かつて自分のアイデンティティに悩んでいた瑜瑜にこう言っていた。妳是妳。きみはきみだよ、と。 虎に耳が欠けていても、しっぽがなくても虎だ。おかしくなんてない。 娘と向き合う父の話としても、台湾の激動の歴史で生きていた人々の話としても読めた。ぜんぶひっくるめて家族の話だ。
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