羽毛
@feather
2026年5月2日
イン・ザ・メガチャーチ
朝井リョウ
読み終わった
どの立場の登場人物にも共感できて、日本の状況もよく分析され咀嚼された上で細やかにそれぞれの心情が描かれていると思った。
推し活から陰謀論、新興宗教らしき言説まで、すべてを馬鹿らしいとか揶揄したり冷笑できるほどの愚かしさには感じられず、それぞれの主張がもっともらしく一理あると思えるほど、いまの日本、世界の現実の方がある意味リアリティを欠くほどにフィクション化していて危うくなっていることに気が重くなった。
この小説がフィクションであってくれる方がどんなにか良いかと暗澹たる気持ちになる。まさか本屋大賞受賞をした頃にカルト化した首相が「シェルターの建設」とか言いはじめるとは執筆中の著者だってよもや想像していなかったろう(もしそこまで想定して書かれていたんだとしたら、この著者の方がよほど怖い存在だ)。
小沢健二『うさぎ!』ミヒャエル・エンデ『モモ』などに底通する灰色〜黒のイメージはまったくの絵空事ではなく実在しているように思える。その存在は様々な団体がいろんな説を唱えて熱弁を奮っているように、どこかで組織化されて実際に暗躍していたりするのかもしれないし、はたまた単に暴走するウィルスのように感染しては世代を超えて生きながらえる形のない人間の業や膿みのような性質のものかもしれない。
ただ私自身の中にもひょんなことからそれが蠢く可能性があり、すでに毒されてしまってはいないかといつでも胸に手をあてて振り返られるよう、物語に呑み込まれすぎずに視野を広げておかなくてはと、細めていた目を開いて最後のページをゆっくりと閉じた。



