
もぐもぐ羊
@sleep_sheep
2026年5月4日

マナートの娘たち
ディーマ・アルザヤット,
小竹由美子
読み始めた
長編が読めそうにないので短編集を。
著者はシリア出身で子どもの頃にアメリカに移民してアメリカで教育をうけている。
登場人物はシリアのみならずエジプトやヨルダンなどいわゆるアラブ系と呼ばれる人たちで、アメリカではマイノリティーであり、国際情勢のタイミングによっては勝手に憎悪の対象にされてしまう人たちだ。
表題作の「マナートの娘たち」は、3世代に渡る女性の人生が形は違えどそれぞれ抑圧されてきたことを描いている。
マナートとはイスラム以前に崇拝されていた女神のことらしい。
伝統的な家父長制の中で生きた祖母、そこからはみ出し逃げ出した伯母、アメリカで暮らしていて一見抑圧とは無縁そうな「わたし」はどんなに努力をしても女であることからは逃れられず両親は彼女が娘ではなく息子ならよかったという感情を隠そうとしない。
印象に残った「懸命に努力するものだけが成功する」は既視感があるというか、アメリカの#MeToo運動がそれまで業界で蔓延っていたハラスメントを白日の下に晒し加害者に罪を償わせる流れになった大きな変化が起きる前のことを描いている。
つまり主人公のリナは社長(権力勾配のある相手)からの性的な発言や誘いに耐えられなくなり会社を去ることにしたが、リナの後任は社長が思い通りにできる女性が就いた。
リナは女性であるだけでなく、見た目ではわからないアラブ系で、同僚がアラブ系への嫌悪を口にするたびに深く傷ついていた。
マイノリティー属性が複数になれば困難は増えることを目の当たりにした。
「リナはわかっていた。あの女たちは、いったん興奮が静まったら代償を払わされる側になるのだと」ーP79より引用
この一文を読んで、#MeToo運動が活発になっても被害者が叩かれることが続いていることの予言のように感じた。
マイノリティーであるリナが声をあげることのリスクは高く、奪われた人生を取り戻せる可能性は低い。
そのため口を噤まざるをえない女性たちがたくさんいることやそうせざるをえない現状について考えなければいけないと思った。









