読書猫 "小さき者へ・生れ出づる悩み" 2026年4月29日

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2026年4月29日
小さき者へ・生れ出づる悩み
(本文抜粋) “私たちはこの損失のお蔭で生活に一段と深入りしたのだ。私共の根はいくらかでも大地に延びたのだ。人生を生きる以上人生に深入りしないものは災いである。” (「小さき者へ」より) “人間と云うものは、生きる為めには、厭でも死の側近くまで行かなければならないのだ。謂わば捨身になって、こっちから死に近づいて、死の油断を見すまして、かっぱらいのように生の一片をひったくって逃げて来なければならないのだ。死は知らんふりをしてそれを見やっている。人間は奪い取って来た生をたしなみながらしゃぶるけれども、程なくその生はまた尽きて行く。そうすると又死の眼の色を見すまして、死の方に偸み足で近寄って行く。” “「今夜ははあおまんまが甘えぞ」 と云って、飯茶碗を一寸押しいただくように眼八分に持ち上げるのを見る時なぞは、君は何んと云っても心から幸福を感ぜずにはいられない。君は目前の生活を決して憎んでいる訳ではないのだ。それにも係らず、君は何かにつけてすぐ暗い心になってしまう。 「画が描きたい」 君は寝ても起きても祈りのようにこの一つの望みを胸の奥深く大事にかき抱いているのだ。その望みをふり捨てて仕舞える事なら世の中は簡単なのだ。” (「生まれ出づる悩み」より)
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