小さき者へ・生れ出づる悩み
15件の記録
読書猫@bookcat2026年4月29日読み終わった(本文抜粋) “私たちはこの損失のお蔭で生活に一段と深入りしたのだ。私共の根はいくらかでも大地に延びたのだ。人生を生きる以上人生に深入りしないものは災いである。” (「小さき者へ」より) “人間と云うものは、生きる為めには、厭でも死の側近くまで行かなければならないのだ。謂わば捨身になって、こっちから死に近づいて、死の油断を見すまして、かっぱらいのように生の一片をひったくって逃げて来なければならないのだ。死は知らんふりをしてそれを見やっている。人間は奪い取って来た生をたしなみながらしゃぶるけれども、程なくその生はまた尽きて行く。そうすると又死の眼の色を見すまして、死の方に偸み足で近寄って行く。” “「今夜ははあおまんまが甘えぞ」 と云って、飯茶碗を一寸押しいただくように眼八分に持ち上げるのを見る時なぞは、君は何んと云っても心から幸福を感ぜずにはいられない。君は目前の生活を決して憎んでいる訳ではないのだ。それにも係らず、君は何かにつけてすぐ暗い心になってしまう。 「画が描きたい」 君は寝ても起きても祈りのようにこの一つの望みを胸の奥深く大事にかき抱いているのだ。その望みをふり捨てて仕舞える事なら世の中は簡単なのだ。” (「生まれ出づる悩み」より)

- シャガ@filifjonka2025年8月10日北海道といえばのイメージ有島武郎。 生活と芸術の狭間で悩む「君」が主人公。 趣味創作を糧に生きる令和のオタクとしては、「君」が仕事の合間に山をスケッチするくらいいいのでは……、とその悩みの切実さに怯んでしまう。 しかし近代の貧しい漁師というあまりに過酷な労働環境の描写(漁師は現代でも時に命懸けの大変な仕事)。誠実に働いているのに、家族一丸となって生計を支える労働者の精神にあと一歩なりきれない苦悩。そうさせるまでに惹かれざるを得ない芸術の魅惑。 ことに元より芸術家である「私」が「君」にはっきりと男惚れしていて、痛ましい同情とその「君」の得難い純粋さにとめどなく惹かれている説得力が良かった。

茅嶋@_Kayashima_1900年1月1日子供としては読んでよかったと思う。 --------------------------------------------- 「小さき者へ」 子を思う親の心は日の光世より世を照る大きさに似て 私は自分の弱さに力を感じ始めた。私は仕事の出来ない所に仕事を見出した。大胆になれない所に大胆を見出した。鋭敏でない所に鋭敏を見出した。 お前たちの若々しい力は既に下り坂に向おうとする私などに煩わされていてはならない。斃れた親を食い尽して力を貯える獅子の子のように、力強く勇ましく私を振り捨てて人生に乗り出して行くがいい。 よく眠れ。(…)そうして明日は昨日よりも大きく賢くなって、寝床の中から跳り出して来い。 お前たちは私の斃れたところから新しく歩み出さねばならないのだ。 前途は遠い。そして暗い。然し恐れてはならぬ。恐れない者の前に道は開ける。 行け。勇んで。小さき者よ。 「生れ出づる悩み」 人間と云うものは、生きる為めには、厭でも死の側近くまで行かなければならないのだ。謂わば捨身になって、こっちから死に近づいて、死の油断を見すまして、かっぱらいのように生の一片をひったくって逃げて来なければならないのだ。










