小さき者へ・生れ出づる悩み

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- シャガ@filifjonka2025年8月10日北海道といえばのイメージ有島武郎。 生活と芸術の狭間で悩む「君」が主人公。 趣味創作を糧に生きる令和のオタクとしては、「君」が仕事の合間に山をスケッチするくらいいいのでは……、とその悩みの切実さに怯んでしまう。 しかし近代の貧しい漁師というあまりに過酷な労働環境の描写(漁師は現代でも時に命懸けの大変な仕事)。誠実に働いているのに、家族一丸となって生計を支える労働者の精神にあと一歩なりきれない苦悩。そうさせるまでに惹かれざるを得ない芸術の魅惑。 ことに元より芸術家である「私」が「君」にはっきりと男惚れしていて、痛ましい同情とその「君」の得難い純粋さにとめどなく惹かれている説得力が良かった。