blue-red "爪と目" 2026年5月5日

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2026年5月5日
爪と目
爪と目
藤野可織
なんとも不気味な、読後に嫌〜な気分を残す小説(褒め言葉)。ストーリー中には、ホラーにもサスペンスにもミステリーにもなりそうないかにもな仄めかし・伏線めいたものが散りばめているが、それらは特に展開されない。読者の気持ちをざわつかせながら、それを裏切るように物語は粛々と進み、悪趣味な復讐とともに静かに終わる。小説の語り手に設定されるのが三歳女児(!)なんだが、その語り(文体)は子供らしさ皆無の冷静・客観的なもので、それがまた不気味さを助長している。 主人公の女性(「あなた」)は決定的な悪事を行う訳でもないが、簡単に言えば人間味がなく嫌な奴だ。不倫に抵抗もなく、連れ子にはスナック菓子を与えて適当に対処する。母親が言うように「いつも自分だけ傷つかない」で「他人事みたい」に物事を受け止め、異性を惹きつける魅力や悪運に恵まれながら、常に自分が良いように自然体で立ち回る。小説として読んでるとなんとも嫌な奴だが、ある意味ではこの人って、「メンタルおばけ」や「鋼メンタル」みたいな言葉で形容されながら人生を飄々と謳歌する、昨今の人達みんな成りたがっている人物像そのものなのでは?? そんな人物であっても、どれだけメンタルが鋼であっても、人は切り離すことのできない脆弱な肉体を持つ。唯一の弱点のような脆弱な目は、傷つけられ続けたガビガビの爪にそのうち復讐される。そんな小説。
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