
euy
@euy
2026年5月6日
国境の南、太陽の西
村上春樹
読み始めた
昔好きだった本。再読する。
「でも島本さんの家で聴くライト・クラシック音楽も僕はすぐに好きになってしまった。それは「別の音楽」だったし、僕がそれに引かれたのはおそらくその「別の世界」に島本さんが属していたからだろうと思う。」
「彼女の父親のレコード・コレクションの中で僕がいちばん愛好したのはリストのピアノ・コンチェルトだった。表に一番が入り、裏に二番が入っていた。僕がそのレコードを気に入ったのには二つの理由がある。ひとつにはレコード・ジャケットがとても美しかったからであり、ひとつには僕のまわりにいる人間でリストのピアノ・コンチェルトというものを聴いたことがある人間が誰ひとりとして──もちろん島本さんを別にしてだが──いなかったからだ。それは本当に胸がわくわくするようなことだった。僕はまわりの誰もが知らない世界を知っている。それはいわば僕だけが中に入ることを許されている秘密の庭園のようなものだった。僕にとっては、リストのピアノ・コンチェルトを聴くことは、人生のひとつ上の段階に自分を押し上げることに他ならなかった。」
