
茅野
@mizuumis
2024年12月29日

山影の町から
笠間直穂子
読み終わった
「読むあいだ、わたしは体を忘れている。痛みによって体が存在を主張しはじめると、姿勢を変えて、ふたたび忘れられるようにする。開いた本と、本を読む目のあいだに、ちょうどいい距離が保たれることを、体のその他の部分が邪魔しないように、うまくいけば、体は消えて、わたしは本のなかにいる。」「現実はいつも、なにかしら苦しい。本のなかに入ると、自分の体は消えて、自分の日常と重なる要素をもちつつも日常そのものとは異なる、一種の並行世界が体験される。だからわたしに必要なのは、没入できる本だった。現実に軸足を置いて解説する文章ではなく、現実を描写することで別の次元に移し替えるような文章。その次元に入りこみ、しばらくそこで過ごして、戻ってくることで、現実は多少、しのぎやすくなる。」


