Moonflower "黄泥街" 2026年5月9日

黄泥街
黄泥街
残雪,
近藤直子
太陽は黄泥街を照らす 「わからないこと 残雪『黄泥街』試論」近藤直子 【感想】 糞汚い小説世界である。 文字通り、糞が頻出するのだ。 それどころか、蝿・蛆・ゴキブリ・蜘蛛・蛞蝓・蛭・蚯蚓・鼠・蛇がひっきりなしに登場する。日ごろ忌避している汚物動物のオンパレードで、また登場人物もみなロクデナシしか出てこないため、物理面精神面の両面において嫌悪感をそばだててくるのだ。 しかし、読み進めてしまう。でも、読んだという実感がない。というのは、何を読んでいるのかわからないからだ。 細部はわかる。糞汚い。それで事足りる。でも、何が語られているのか、文章単位でさえわからないことがある。意味が、文脈が脱臼していく。文章は抽象的ではなく徹底して具体的なのに、それでもなお/それゆえに、意味も文脈も失われていく。せめてその取っ掛かりを掴もうとしているうちに、小説は終わってしまう。 ちょっと他に類例が思い浮かばない。巻末に収録されている訳者の論考を読んで、ようやくある程度の輪郭が掴めたくらい。ではもう一度この世界に戻って探索したいかというとそれはしばらくごめん被りたいのだが、「言葉が言葉によって脱臼していく」この小説経験は面白かった。残雪の他の作品を読んでみるしかなさそうだ。
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