
Haruhito
@haruhito27_reads
2026年5月8日
教養主義の没落
竹内洋
読み終わった
もとより近代日本における教養とは、西洋文化を手本とする華族文化を媒介としたエリート階級文化だった。そこから『三太夫の日記』や『善の研究』に代表されるような大正教養主義に始まり、教養のもつ象徴的暴力性を前面化させたマルクス主義的教養の台頭と規制、より社会的実践に重きを置いた昭和教養主義、大戦下の軍国主義による抑圧を経て教養や知識人への疑義が生じ、教養主義が先鋭化していった結果として全共闘運動にまで発展、教養主義文化は最高潮に達する。1960年代の高度経済成長を迎えて日本が豊かになると、従来の農村的エートス(修養主義)が払拭され、都市型社会への変化が起きる。それにともなって経済格差や文化格差が緩やかになり、階級文化は消失。新中間大衆の時代が到来すると教養は意義を失っていく。
教養主義の没落の流れを体系的に知ることができる。そのうえで、自戒を込めて、教養の現在地を考える。現代人の読書離れが常態化し、出版業界は縮小する一途。「好きなことをして生きていきたい」と誰もが思っているはずだが、その人生設計や自己実現にはたして教養は不要か否か。