
ふじこ
@245pro
2025年3月20日

潤一
井上荒野
読み終わった
猫のようにするりと懐に入ってきて、ふと気付くといなくなっている。潤一はそういう存在だ。留まる場所を持たず、波のあいだを揺蕩うように生きていく。自分の中に残された爪痕をなぞりながら、彼の不在をゆっくりと受け入れていく9人の女たち。もしかしたら私も潤一と束の間一緒にいたことがあったかもしれない。彼が本当に求めていたのは愛だったのではないだろうか。潤一は愛にたどり着いたのだろうか。いつの日か潤一のことを思い出す日が来るような気がする。彼がどこかで元気にしてくれていたらいい。頬に春の風を感じながらそう思った。