
こたつ
@pgrpgar
2026年5月11日
読み終わった
季節に置いていかれている気がする。
私が自分の日記にそう書いたのは半年ほど前のことだ。
石川啄木は「友がみなわれよりえらく見ゆる日よ」と詠んだが、私の場合は「友がみなわれより先をあゆむ日よ」といったところだろうか。そういう焦燥感と惨めさがあった。
この本の冒頭も、こんな一文から始まる。
「毎日を生きていると、世の中は少し速すぎると感じることがある。」
(p4)
同じことを感じている人は他にもいたことにはっとした。
筆者は、自らが挫折を味わう中でも少しずつ気づいていったことを、本書を通じて語りかけてくれる。強さや真面目さといった、一側面から見た分かりやすい美徳だけが人の価値基準ではないこと。自分と仕事(あるいは社会)の間に余白を持つこと。そして、傷ついたことのある人だからこそわかる、否定も肯定もしない優しさ、相手の見えない勇気を汲み取る気持ちといった、引き算の美徳があるということ。自分の素直な感情の置き場を作ること。感情を置ける環境を静かに整えること。
先の啄木の歌は、下の句で「花を買ひ来て妻と親しむ」と続く。友が出世している姿を見て落ち込む日に、せめて花を買って妻と穏やかに話をしよう、という意味だ。
今まさに傷ついている身で、筆者のように自らの経験を穏やかに優しく語り直すのは生々しすぎて正直なところ難しい。まずは心許せる人と穏やかに話せる、自分の感情の置き場を見つけられるといいなと思う。時間はかかるが、ここで傷ついたぶん、自分も誰かにそっと優しくできることを信じて。

