
阿久津隆
@akttkc
2026年4月28日

響きと怒り
ウィリアム・フォークナー
読んでる
キャディが登場して、ジェイソンに頼み事があるらしい。ジェイソンが「ぼくを信用しないのかい?」と訊くと「ええ」と言い、「あたしあんたのことはよく知ってるわ。だって、一緒に育ったんですもの」と言う。キャディの望みは娘の姿を見させてもらうことで、50ドルとかを受け取ってそれを約束したジェイソンは馬車に乗って、キャディが待つところに近づくと、赤子が見えるようにし、そしてそこで馬に鞭を打って、すごい速度で駆けていった。その翌日とかにキャディがまたジェイソンの職場に来て、ジェイソンは「ちゃんと見せたじゃないか」みたいなことを言う。中学生みたいだ。「彼女はなにもいわず、また動こうともしなかった。おれには彼女が小声で、罰あたり この罰あたり この罰あたり と口の中でつぶやいているのが聞こえた」。本当に罰当たりの嫌なやつだ。それからキャディは怒りからふっと転換し、「あたしは気がどうかしているわ」「あたしは気違いだわ。どうしてあたしに、あの子を引きとれるものですか」と言って、クェンティンの面倒を見てくれるようにジェイソンに頼んだ。
p.368,369
「よだれ掛けやあんよ車を買ってやれっていうのかい? ぼくは今までは一度もねいさんにこんなことをいったことはないんだが」とおれはいう。「ぼくはねえさんよりずっと危険をおかしているんだよ。だってねえさんはなに一つ賭けてはいないんだからね。だからもしねえさんが―」
「そうだわ」と彼女はいい、ついで笑いだしたが、それと同時に一生懸命それをこらえようとした。「そうだわ。あたしはなに一つ賭けていないわ」と彼女は笑いながら、両手を口に当てながらいう。「な、な、なんにもね」と彼女はいう。
「おい」とおれはいう。「笑うのはよしてくれ!」
「とめようとしているのよ」と彼女は両手で口をおさえながらいう。「本当に、どうしたんでしょう」
クェンティンが車の中で破裂するように笑い出したところと重なる場面。ふたりの哄笑が小説中に響き渡るようで、それは痛ましいものだった。