阿久津隆 "響きと怒り" 2026年5月2日

阿久津隆
阿久津隆
@akttkc
2026年5月2日
響きと怒り
響きと怒り
ウィリアム・フォークナー
電車はずいぶん混んでいて、ぎゅーぎゅーだった。『響きと怒り』を開いて読むとクェンティンが赤いネクタイの男と歩いているのを街で目撃して、ジェイソンが追っていって、ふたりはフォードに乗って、どこかにしけこもうとしていて、ジェイソンが追っていて、「いつもいうように、おれはなにもそれをとやかくいうんじゃない、たぶんあいつには、それはどうしようもないんだろう。おれのいいたいのは、いくらあいつでも自分の家族の名誉を考えて、少しは慎重にやってくれっていうことなんだ」という言葉に当たってバキッと目が覚める感じがあって、たぶんあいつには、それはどうしようもないんだろう、おれのいいたいのは、少しは慎重にやってくれっていうことなんだ。これは僕はとても哀しく、そして、そうだそうだそうだと思うものだった。ジェイソンがこんなふうに考えていたとは。ジェイソンのそういう考えはしかし若いクェンティンには伝わらずに車を停めて藪の中を進んで、元のところに戻るとフォードの姿はなくなっていて、車は「ヤーーー、ヤーーー、ヤーーーーーー」とラッパの音を鳴り響かせながら走り去っていった。ジェイソンの車のタイヤの空気を抜いていくという悪行も。やめなさいよクェンティン、という思い。ジェイソンに寄り添う気持ちが自分の中に生じていることに面食らいながら移動する朝になった。
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