
yomitaos
@chsy7188
2026年5月12日
読み終わった
@ 自宅
ビジネス書の多くは経営者、もしくは投資家などの資本家によって書かれている。そうでなければ実践家ではない学者だ。だけど、それを手に取る多くの読者は従業員。これが非常に良くない。会社を成り立たせる、たかが従業員のひとりに過ぎない読者に、「会社目線でのベストな働き方」を叩き込んでくる。
資本主義下における会社は利潤の最大化を目的に動いているのだから、費用を抑えるために、構造的に従業員から搾取することになる。それを内発的動機付けにより、あらわに見せないようにしているだけなのに、経営側の目線を持たせることで「搾取されても仕方ない」と思わせてくる。そんなビジネス書ばかり読んでいたら、奴隷根性に磨きがかかるだけだ。
この本の著者は外資系コンサル出身者の経営者で、ほんらいならそれだけで読もうと思わなくなるのだが、タイトルに意外性があって手に取った。資本家はもちろん、コンサルにとっても「働かないおじさん」など排除すべき存在だろう。しかしこの本では、従業員としてこの資本主義を生き延びるなら、「働かないおじさん」という選択は有りだと謳われているのだ。これは驚いた。こんなことを言うコンサルや経営者は見たことがない。
また、ゴマすりや太鼓持ちにも一定の評価を下しているのが面白い。会社の潤滑油や空気循環の装置としての役割という意味だが、たしかにハイスキルの人材は外注でも賄えるものの、会社の空気を良くできるかの能力とイコールではない。従業員にとっては、いかに楽しく、楽に働けるかが重要なのであって、会社を成長させることに過剰にコミットする必要はない。そのための役回りに徹することができるなら、そんな生き方も悪くない。
日本には、言葉通りの意味で「従業員向けのビジネス書」はほとんど存在しない。この本は稀な存在だ。柿内正午の「会社員の哲学」とともに、ぜひ全国のいち従業員に読んでもらいたい一冊。

