
ハイボール
@mt_24
2026年4月9日
命売ります
三島由紀夫
読み終わった
『この天井の裏側にスモッグに包まれた星空がある、と考えると、羽仁男は、腕を枕にして雨じみのひろがった天井を見上げながら、神の装置を感じた。シャンデリアのかがやく大会議室の天井の裏側にも、こんな鼠の宿の天井の裏側にも、同じ壮大な星空があるのだ。悲惨や孤独は、幸福や成功と、この星空の下では全然同じものだった。一つ引っくりかへせば、どこからも同じ星空がのぞくに決まってゐるのだ。彼の人生の無意味は、だからその星空へまっすぐにつながってゐた。羽仁男は、この木賃宿に身をひそめてゐる「星の王子さま」かもしれなかった。』