
カササギ
@Kasadagi_shobo
2026年5月14日

ぼくのシェフ
西村ツチカ,
長谷川 まりる
読み終わった
また読みたい
物語は少年の視点から描かれる
主人公よりも落ち着いた語り口ではあるが、たんたんと進む描写に何か足りないと思わせるところがある。全てを言い尽くさない、明らかにされない部分にも引きつけられる。
ふたりの少年の出会いのシーンから物語は始まる
彼らふたりの成長譚ではあるが、序盤でこの物語世界に不穏な病の出現が語られる。「食死病」食べ物から“死のにおい”がして食べることが出来なくなりやがて死に至るという恐ろしい病。この病が一体何のメタファーなのか。それが読み終わった後もずっと心に残り続けている。たとえるならモモの「灰色の男たち」だろうか。私たちが生きているいまの世界でも、恐らくこの病のような現象はあるのではないか、それは一体何なのだろう…そんな考えにずっと取り憑かれている。
ふたりの少年の生きている環境は違う
家族構成も家庭環境も。年齢もふたつ違う。それが“格差”だと言ってしまえばそうなのだが、物語後半部分でその関係性が反転する。その鮮やかな展開が見事だ。私たちは彼らの一体何を見ていたのだろう、何もわかっていなかったと主人公同様に心を揺さぶられる。
物語の結末は静かでとても優しい
そして、希望がある
どこにこれほど惹かれるのか、うまく言葉にならないけれど、恐らく、与えられるのを待つのではなく自ら生き抜く活路を見出していくこの主人公たちの強かさ、生命力の強さに希望があると感じるのだと思う。物語を生きる子どもたちの力に全幅の信頼がある。単なるハッピーなエンド以上の魅力をそこに感じた。食べることは生きること。いのちをつなぐこと。そのために料理がある。料理を覚えることは生きる抜く力を身に付けること。では、自分のためではない料理は一体何だろうか。それはどうあるべきなのか。答えは彼らが教えてくれる。生きるためのいのちの料理、そのあり方を。
繰り返し読んでいろんな解釈、想像を広げることの出来る素晴らしいテキスト。時代を超えて残っていく傑作児童文学と同じにおいがする。出会えて良かった。







