
mayu
@yatsu_books
2026年5月9日

雪の練習生(新潮文庫)
多和田葉子
読み終わった
@ 自宅
ホッキョクグマが人の言葉を理解したり、会議に出席したり、自伝を綴ったりする姿に最初は少し戸惑ったのだけれど、すぐにこの「わたし」の語る物語に引き込まれて、次第に人とクマの境界が曖昧に感じられてくるから不思議。
そして、クマの目を通して語られるうちに、わたしたち人間の振る舞いがどんどん奇妙なものに思えてくる。
社会主義国のサーカスに対する動物保護団体の非難、育児放棄した母グマをめぐる、母性本能論。
ただ生まれて生きたというだけなのに、地球温暖化問題の象徴に祭り上げられ、成長してその愛らしさが失われ、見向きもしなくなる人の身勝手さ。
そんな耳に痛い人間達の行動だけれど、それを決して糾弾することなく、時にユーモラスに、時に悲しく、そしてあくまでも美しい情景描写と共に綴られているせいか、嫌みなく文章ひとつひとつがしっくり馴染むように、真っ白な雪と氷の情景がまるで残像のように残ります。
『本の練習生』と合わせて読みました。










