
活字畑でつかまえて
@catcher-in-the-eye
2026年5月20日

ロングウォーク
スティーヴン・キング(リチャード・バックマン名義),
沼尻素子
読み終わった
あー、読み始めて数ページですでに面白い。
なんなんだキングという作家は。
まさにストーリーテラーのキング・オブ・キングだ。ひれ伏すしかない。
死のロングウォーク。
単純に理不尽に徴兵されることのメタファーなのかな。
ウォーカーたちはチューブに入った流動食で栄養補給をしているのは、過酷な戦地ではまともな食にすらありつけないことなのかなと。
そして所詮は、死のロングウォークや戦争すら
見物人にとっては娯楽の一つ。
死の消費。
それを裏付けるように「フランスの貴族や貴婦人は、ギロチン見物のあとでセックスしたそうだし、古代ローマ人は剣闘試合の最中に腹一杯食ったそうだ。ロングウォーク見物もお楽しみなんだよ。」というセリフがある。
小さいころロングウォーク見物に行ったギャラティにマクヴリーズが言うセリフ「知らなきゃ許されるんだな?」は強烈だ。
小さいころとは言えお前だってロングウォークを消費し死を消費していたんだと冷や水を浴びせる。
「死は大いに食欲ゃ性欲をそそる」というセリフも凄い。「おれたちが人間だって、どうしていいきれる?」
あぁ、キング先生!
「おれたちは死にたいのさ。だからこうして歩いてる。ほかにどんな理由がある?」
あぁ、キング先生‼︎
「何か特別な理由があってロングウォークに参加したのか?」
「実はわからないんだ」ギャラティは本当のことをいった。
「おれもそうなんだよ」ベイカーはしばらく考えていた。
なぜ参加したのか本人にもわからないというのがすごくリアルだ。生きている理由がわからないというのにも通じるというか。なんとなく成り行きでそうなってしまったという感じ。
この物語はもしかしたら、ウォーカーたちを見つめる傍観者たちにスポットを当てた作品なのかもしれない。傍観者がいちばん残酷だということ。
「最悪の破壊的な痛みに見舞われながら、これから先自分は存在しないのに、宇宙は今までどおり何事もなく何物にも妨げられずに運行を続ける、と悟るのだ。」名文である。
「もしおれが優勝したとして、何をもらいたいか、全然思いつかないんだ」とマクヴリーズ。
「本当にほしいものなんてなにもない。つまりな、老いぼれて病気で寝たきりのおふくろとか(以下、略)」
「重要な点をついてるな」
「重要な点が抜けてるってことだろ。ロングウォークなんて百パーセント無意味だ。」
これまたリアルなやり取りだ。すごい。
「雲の上のどこかで雷が手をたたいた。前方で青いフォーク形の稲妻が地面に突きささった。」
素晴らしい表現だ。
「本なんて時には読み捨てにするものよ、研究するものじゃないわ、と彼女は教えた。
たしかにもっと気楽に読書と向き合いたいな。
「暗闇。くそったれの暗闇。ギャラティは闇に生き埋めにされたように思った。監禁されてしまった。夜明けは一世紀も先だ。〈中略〉闇の中に六フィートの深さで埋められている。」
これもまた素晴らしい表現だ。闇に生き埋め。
「レイ•ギャラティというこの有機体が死ぬはずはないという、揺るぎない妄信がいぜんとしてある。他の奴は死ぬかもしれない。彼らはギャラティの生涯の映画のエキストラだ。しかしロングランのヒット映画〈レイ•ギャラティ物語〉のスター、レイ•ギャラティは死なない」
かっこよすますキング先生!
終盤になると死のロングウォークが反転して
生のロングウォークになる見事な手腕。
キング先生はとにかく歩き続けろ、それがお前を顔のない群衆ではな輝くメインの星にするんだと焚き付ける。「おれの仕事は、片足をもう片方の足の前に出し続けることだって」と。
「パーカーの殺した兵士の代わりが、知らないまに補充されていた。」
交換可能な兵士たち。
傑作だけど
もったいない!
ラストの描写が分かりにくい。
よく分からなくて何度か読み返した。
フィクションなんだから
金髪の兵士や少佐に
一矢報いてほしかったな。
