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2026年5月15日

愛と人生
滝口悠生
買った
かつて読んだ
古本
archive
初夏の陽気の日に買い直したこの小説の文庫本で、3年前の盛夏の偶然と特別を思い出す。あの日に履いていた半ズボンとスニーカーを今日も履いていた。特別だった日の偶然を思い出す喜びと、思い出すこと自体の哀しみと、そこから今までの人生までを思いながら、当時書いた文章を読んでいる。小説と人生。本と日記のある過去。この文庫本は今年も夏に読み直したい。その時間がまた特別になればいいな、と思っている。
9.7.2023
「郡山から黒磯、黒磯から宇都宮、と東北本線を乗り継ぎ、そこからまた上野へと長い移動が続いた。」
東京から宇都宮に向かう東北本線の車内でこの文章を読んだ。上京する少年とは逆のルートで向かう目的地は黒磯。久しぶりの長い移動時間に選んだ文庫本で出会うシーンとしてはベストな気がしたし、少年に倣って車窓を眺めると快晴の空がとても広かった。今日も全部OKな日になるなと思った。
映画のストーリー、登場人物と彼らを演じる役者の人生と感慨、過去と記憶。映画のなかの人生と「現実」の物語の境目が溶けていく。そんなふうに書かれた、と思える小説。それを書いている作家の思索と創造も加えて、幾つもの層が見え隠れしつつ、重なり合いひとつになったような物語。これもやっぱり凄い小説だ。そこに今電車のシートで文庫本を開いている人生を重ねる、重なる。新しい物語が始まる気もする。ああ、これは特別な体験をしているのかもしれない。
黒磯に着くまでにはあと2時間くらいあるから、この小説はきっと読み終わる。向こうに着いたらこの小説と、それにさっき始まりそうになった物語のことを話したり書いたりしよう。そう思った直後に入眠して宇都宮までワープしていた。
改めて読み終わったのは後日、また別の移動中の車中だったのだけど、文庫本を閉じると黒磯で買ってきたとても素敵な包装紙がかかっていて、そこからあの日の広かった空や思いがけない暑さ、会話や出会い、最高だった楽しさを思い出す。やっぱりあの日は全部OKで素晴らしい日だった。と書き残しておきたい夏の日。小説と人生。


