
橘海月
@amaretto319
2026年5月16日
川のほとりに立つ者は
寺地はるな
読み終わった
駅前のカフェで働く清瀬は、病院からかかってきた電話で、かつての恋人松木が意識不明の重体だと知らされる。関係性を問われた清瀬は咄嗟に「婚約者です」と嘘をつくが…。“川のほとりに立つ者は、水底に沈む石の数を知り得ない”複雑な想いを紐解いてゆくような物語。
恋人の松木には清瀬の知らない秘密があり、家族と複雑な過去があった。店長である清瀬にとって厄介な従業員な品川にも、松木の友人である樹にも。人それぞれに抱えた秘密は彼らの人生に深く影響していた。そして謎の女性である天音にも…。鬱々としたもどかしさの中にも、意外な爽やかさも感じられた。
物語を通して思う息苦しさは、著者がなかなかに「その人の中にある他者から嫌われる要素」をうまく描いているからかなと思った。清瀬の嫌いな面、松木の、樹の、そして天音の。誰にでもある要素でいて、物語には意外と登場しないこともある面。だからこそ篠ちゃんが言う「ほんとう自分とか確固たるものなんかない」が響く。

