
JUNYA WARASHINA
@junya-warashina
2026年5月17日
ベル・ジャー
シルヴィア・プラス,
小澤身和子
読み終わった
完璧に見える人生の中で、息ができなくなることがある。
シルヴィア・プラスの半自伝的小説『ベル・ジャー』の主人公、エスター・グリーンウッドは優秀で、憧れのニューヨークでのインターンも掴んだ。傍から見れば、順風満帆な女性だ。でも彼女は、どこにいても少しだけ息苦しい。「こうあるべき」という期待と、本当に望むものの間で、その歪みはやがて身体に滲み出ていく。
タイトルの「ベル・ジャー」とは、密閉された鐘型のガラス瓶のこと。自分だけが薄い空気の中に閉じ込められているような、あの感覚だ。均衡を失いながらも自分を確かめようとする彼女には、ベル・ジャーに映った歪んだ顔を見て力なく笑うような、空虚なユーモアが漂っている。
それでも心臓は、鳴り続ける。
“I am, I am, I am.”(私は、私は、私は。)
これは破滅に向かう物語ではなく、それでも自分であろうとする意志を静かに肯定する物語だ。60年以上前に書かれたこの小説が、いまなお世界中で読まれ続けているのは——ベル・ジャーに映る自分の顔を、確かめたい人がいるからかもしれない。
