しまりす "竹取物語" 2025年3月19日

しまりす
しまりす
@alice_soror
2025年3月19日
竹取物語
竹取物語
森見登美彦
大井田晴彦氏の解題の情報がギチギチに詰まって有益だったので、自分が気になった部分だけまとめる ■成立、作者、似た作品 『源氏物語』の中の「物語の出で来はじめのおやなる竹取の翁」より、『竹取』は最古の物語、物語の元祖とされていたことがわかる 物語成立時期、9-10世紀初頭あたりか 作者は何人か候補があるものの不詳 漢詩文や仏典、和歌に広く通じた男性知識人だとされる 『今昔物語集』巻三十一にも竹取翁の説話がある チベットの長篇昔話「金玉鳳凰』の一篇「斑竹姑娘(パンツークーニャン)」は『竹取』に酷似する……娘を見つけた若者と結ばれてハッピーエンドとなる点は異なる →『竹取』の方が古い ■本作に見られる話型 ・貴種流離譚……生まれ故郷から放逐された高貴な罪人がさすらい、贖罪の旅を続ける話 ・白鳥処女説話(天人女房譚、羽衣型)……地上へ降りてきた美しい天女が人間とかかわり、やがて天へ還っていく話 ・致富長者譚……虐げられた善良な者が神仏に祈願し続け、ついにその甲斐あって願いが聞き届けられる話 ・難題求婚譚(難題婿)……勇武や知恵を持って英雄が難題を克服し、美しい姫を得る話 ■神仙思想 『竹取』は神仙思想の濃厚な作品 満ち欠けを繰り返す月は、死と再生のイメージ 『杜子春』同様、神仙を否定し、人間であることに居直る姿勢 不完全で卑小な存在に過ぎぬ人間の愛情と信頼に裏打ちされたこの世の肯定こそ、『竹取物語』の主題との解釈 ーーーーー 所感 求婚する5人の男性の奮闘の箇所が確かに面白い。現代でもこんな人たちいるよね、って思えるリアリティがしっかりあって、「今は昔」でありながら共感を誘う「今も昔も」な部分がちゃんとある。 かぐや姫は月の住人であり月からの使者に連れて行かれる、というのは言い換えれば地球に降り立った宇宙人がしばらくして宇宙に連れ帰らされるともなる。 日本最古の物語はそんなSFの要素も孕むと捉えると、斬新どころから始まった連綿と続く日本の創作はいろんなパターンが出尽くしたように見えてまだまだ可能性がある気がしてワクワクする。
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