ぱち "BUTTER" 2026年5月17日

ぱち
ぱち
@suwa_deer
2026年5月17日
BUTTER
BUTTER
柚木麻子
読書会の課題本で読んだ。初柚木麻子さん。 まず文章がメチャクチャ上手くてするする読めた。 結構文字数が詰まっている上にページ数も多いけど読むのに全然苦にならなかった。 前情報からドロドロした内容なのかなと思っていたけれども、社会的ないろんな要素やモチーフをしっかり取り入れながらもエンタメとして昇華した文章で読んでいて嫌な感じがない。 小説の中で書かれていないことについてあれこれ想像するのはどうかとは思うものの、「梶井真奈子」はどういう人物だったのかということはやはりどうしても想像をめぐらせてしまう。 側から見ると一貫してなく矛盾でひしめいている人物に思えるのだけど、本人にとってはたぶん嘘や矛盾が生じることは全然問題になってなくて、場当たり的に相手よりも優位になれるような言動が行なえていればいいというスタンスなんだろうなと思う。 この小説を読み進めていく中でひとつ気にかかることがあった。それは「家」(物理的な)の中のイメージについてだ。出てくる登場人物たちそれぞれは人柄や生活感があってその人の家の中のイメージが何となく想像することができる。(柚木麻子さんの描写力の賜物だと思う) でも梶井真奈子は華やかな生活を送っているように作中のブログでは書いているけども、実際は新潟にある梶井真奈子の実家のような、何か家族以外の他人を寄せ付けない生活空間なのではないかなと想像してしまう。 物語の終盤に主人公の里佳が梶井真奈子と同じように七面鳥を焼いて友人たちを新居の自宅に招待する場面が対照的だなと思った。引っ越したばかりの新居で家の中には物がほとんどない。他人を招待するのには不十分な環境のようにも思える。でも里佳にとってはそれは問題にはならないのだろう。自分がどう見られたいかではなく、ただ友人たちがその場に一緒にいるという事実と美味しい食べ物を分かち合うという体験の共有が大事だという価値観なのだろうと思う。 「梶井真奈子」については自分だったら正直存在を避けて一生無関係でいたいと思う。でもこういう人って現実にいるよなと思うし、「梶井真奈子」の弱さって自分の中にもあるものだよなと考えたりもする。またいつか再読する予感がある。良い小説だった。
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