BUTTER

195件の記録
- いっちー@icchii3172025年5月19日読みたい積んでるこれものらじおというPodcastに出てくる。イギリスの院に行った友達と海外の友達がたくさんいる修士卒の友達もこの本を読んでた。社会派の本で論文の延長にあると勝手に理解している。その友達たちのインスタストーリーに影響を受けて4年前くらいに買ってみたけど、食欲が増進されるのもあって止まってた。ちゃんと読んで、そしてのらじおの感想回を聞くのだ
- 本が好きな猫@nekomum2025年5月17日買った積読中すごくページ数が多い本だから1年以上購入を躊躇してたけど、“食にまつわるテーマや登場人物の成長、そして女性の見た目や社会的役割に対する社会の眼を描いた作品が好きな方にぴったり” とゆう海外のレビューに一押しされて、ついに買った💦
- もぐもぐ羊@sleep_sheep2025年5月13日読みたい柚木麻子さん『BUTTER』が「The British Book Awards 2025」Debut Fiction部門を受賞! とのことで、ずっと気になっていたけど未読だったのでこれを機に読みたい。 柚木さん、おめでとうございます!
- 蛍@bcgcco2025年5月9日読み終わった誰のための料理なのか、という問いは身近でありつつも人生に繋がるものだ思った。 カジマナが作りたい相手に恵まれなかったのに対して、主人公は愛する皆のために苦労に苦労を重ね料理したい、と締め括ったのが、そうだよな、それでこそ人生だよな、と共感。同じ道を辿るのかと思いきや何が何でも死なない、生きてみせるという根性にもぐっときたし、私は好きな結末だったなあ。 料理というものが持つ意義をどう捉えているかによって、結末の納得度合いは違ってくる気もする。
- burio@burio022025年5月2日読み終わったアメリカ人の料理教室に行った時に、先生に「この料理はバターを3kgつかうからね」と言われ、参加者のお姉さんが「今日はバターを楽しむために来たんだから問題ない」とすかさず切り返していたのを思い出した。 気になったところはいくつかあるがこれだけ。 ボーダーコリーは小柄な女性がハンドキャリーできるようなクレートに入るサイズてばないと思う。
- そめ@s_o_m_e2025年4月27日読み終わった人と繋がろう、繋がりたくてたまらないという人たちのパワーを浴びて、読了後は開放感のあとで疲労がどっと来た。 美味しそうなご飯の描写がうまい。ほかほかご飯にバターを乗せたくなったり、エシレのバターと高い食パンを買いに行きそうになったりした。値段のせいで思いとどまってる。 主人公が体型を気にしなくなって自分の身体のことを受け入れていくの、すごくよかったな。 カジマナが手料理でもてなしたかったのは男ではなくて、女友達や女の家族だったんだろうな。
- みあ@AnneLilas2025年4月25日読み終わった実録犯罪ものに見せかけた、料理やレシピを巡る女同士の微妙な関係性の力学を執拗に辿った作品。 途中あいだが空いたせいもあり、取材対象に対するヒロインの記者のスタンスがコロコロ変わるのがどうも腑に落ちず、妊活を機に破綻した親友の結婚生活などあれこれ盛り込み過ぎに思えて消化不良気味。篠井さんの存在が拠り所だった。 序盤に言及のある『ちびくろ・さんぼ』がまさかここまで重要な役割を果たしているとは。
- 橋本吉央@yoshichiha2025年4月21日読み終わったとてもボリューミー! 食という豊かな装飾を押し出しながら、ジェンダー、女性性・男性性という観点から、結婚詐欺の相手を死なせる犯罪とその周辺の登場人物の群像劇を描いているのだな、と最初は感じたのだが、より複層的に、父と子、自身の欲望、傷と回復みたいにいろんな話が出てくる。 よくこれだけのテーマを一つの物語の中で詰め込んだな、という感嘆。登場人物が多いので、自分や周囲の人物を誰かに投影するというようなこともあり得るのかもしれない。 一方で、連載作品だったからというのもあるかもしれないが、節ごとに描写のボリュームが非常に多く、やや情報量過多というか、読者に想像させる要素があまりない印象もあった。最後の、梶井が里佳に対してどういう気持ちと振る舞いをしたのか、果たして梶井が殺人をしていたのか、というあたりは明確に描写はされず、大きなストーリーとしては想像の余地を残す部分があった(それは良かったと思う)が、ひとつひとつ読み進める中では、細かい描写が詰め込まれてやや疲れる感じもあった。
- あまり@jmr2025年4月19日読み終わった★★★★★ めちゃくちゃ小説が上手いし、めちゃくちゃ文章が上手い〜〜〜 物語を引っ張る牽引力がすごい。文句なしの星5。 わりとあっという間に読んだ。 主人公里佳と親友怜子と刑務所の梶井真奈子、三人のこれまでの人生を走り抜けたような気持ちになる。 するする読めて一見あまり特徴も無さそうな文章なのに、身体性があって想起させる風景があって、軽くはないのが凄い。 重要なところは目が止まるようになってるのも凄い。なんかしっくり来ない文末だな、と思ったところで場面転換してるのに気づいて、こんな技があるんだ!と驚いた。 どんなプロット作りしてるんだろ。 写経して、ストーリーと心情の動きを書き出して整理したい。
- opsun@gomi_atsume2025年4月18日読み終わった読了。 食べ物描写が魅力的!というレビューを見かけて手に取ったけれど、個人的には食べ物の描写はわりと平易に感じた。 もしかすると、私自身思考が拡散的で料理をする機会か多いからなのかもしれない。料理を食べている時の心地良さって、知らない味の深さの所以に触れることや、自分でも作りたい!という創作意欲、他人の作ったものに触れる実感、のようなものが強い。なので、最後のチキンが一番舌が踊った。 どちらかというと、そういった食よりも根深く残るルッキズムや親子のこと、あるいは家族といる中で否応なく発生する自責、苛立ち、多面性、タイミング、距離感などの描写がとても良かった。腹の中でじっくりと煮込まれていくような感覚。最初は伶子にかなりヒヤヒヤしたけど、どの人をとっても「なにかがひとつ違えば、自分もこうなっていたかもしれない」という隣り合わせの感覚があった。 随所でモチーフとして使われているバター、ちびくろサンボなどについては、正直まっったく噛み砕けなくてぬるっと通り過ぎてしまっている。
- ゆゆゆ@yomyom172025年4月17日買った読み始めた積読消化ずっと気になってて図書館でも借りたし積んでもいたけど読んでいなかった小説。 誰よりも気にかけてたんじゃないかと思ってしまう。ようやく読み始めた、きっかけは不明。長い間積んであった中から、ふと選ばれる理由はなんなのだろう。
- さや@saya_shoten2025年4月15日気になる買った@ TEGAMISHA BOOKSTORETEGAMISHA BOOKSTOREで表紙の絵の方の展示の時に買った! ポッドキャストのY2K新書もまた聞きたいなー。
- うみ@udn_dn2025年4月8日読み終わったいつか必ず読もうと決めていたBUTTERを、3月頭の講演会をきっかけに勢いで買った。もっと早く読んでいればよかった!よりも、今読めてよかったの気持ちの方が大きい。一日少しずつ読み進めるごとに、振り返って誰かと感想を共有したい気持ちになる本だった。柚木麻子さんの作品を読むと、これから先、自分が思っているよりもずっと自由に生きていける気がする。あまりにもバターが美味しそうに書かれるので、何かバターを使った料理を作りたいと思い、読み終わるまでの間に作中に出てきたバター醤油ご飯のほか、バターライスのオムライス、味噌バターラーメンを作って食べた。
- opsun@gomi_atsume2025年4月2日読んでるバターを食べ、誠からのLINEに違和感を覚えた後、正月明けの面会で興奮するカジマナのシーンでNetflixのドラマ『マインドハンター』を思い出す。
- 夏しい子@natusiiko2025年3月29日かつて読んだ終わりかけまでは面白かったが、梶井と話さなくなった辺りから雲行きが怪しくなってきたと感じた。 梶井も多くの女性を傷つけただろうが、主人公も取材のためとは言え、偽名で料理教室に入り込んでマダムや生徒たちを傷つけたのでは無いだろうか。その辺りのフォローが最中は甘いと感じてハラハライライラしてしまった。 親の離婚を経験した私としては主人公と父親の関係は痛いほど良くわかる。 だからこそ父親が恨んでいなかったかもというのは都合良過ぎる父との関係の締めくくりに感じてしまった。
- モトムラ@motozab14582025年3月21日読み終わったまたいつか感想ようやく読み終わった 残りのページ数がかなり少なくなったところで突き落とされたのに、しっかりと落ち着くところに落ち着いてお話が終わる、りかたちは生きていく、いいお話だった
- mikoto@mikoto_ps22025年3月19日読んでる第一章を読み終えた。 レビューにもある通り、食欲をそそる文章だと思う。 結末がどうなるか分からないが、最後まで読みすすめられそう。 イギリスで流行しているのも納得だ。
- amy@note_15812025年3月15日かつて読んだ感想フェミニズム実際にあった婚活殺人事件をモデルにした小説。 バターをふんだんに使った料理からフェミニズムとかルッキズムが透けてみえる。そして女性は女性の容姿に厳しい、男性から女性への眼差し以上に。 主人公の恋人がアイドルオタクの男性なのだけど、好きなアイドルがちょっとぽっちゃりしただけで応援を辞めちゃう。アイドルオタクをやっている身としては日々少し体型が変わったり、衣装の関係でそう見えているだけなのにライブのキャプチャをネットに貼られて劣化だの激太りだのおもしろおかしく糾弾されるアイドル達を思い出して苦しくなった。タイトルの通り「BUTTER」のように濃い一冊。
- 橋本吉央@yoshichiha2025年3月14日気になる読みたい『あえのがたり』で柚木麻子がよかったので読みたいなーと思っている。とりあえずAmazonのほしい物リストに入れた。読みたい本いっぱい…
- Hachi@bee2025年3月10日読み終わった読了。読みながら、ここはこの部分はこの人に読んでもらいたくて、この部分はこの人に読んでほしくてってどんどん色々な顔が思い浮かぶような本だった。また遠くない未来にまた読みたい。
- 皆久保ヨリ@minakubo_yori2025年3月9日読み終わった続きが気になってぐんぐん読み進めた! あまりにバターが美味しそうに描かれているので、読んでいる途中でバターを熱してスクランブルエッグを作りました😌 (炊いたお米がなく、作中のバター醤油ご飯はまたの機会に) 誰かと語りたい小説!📚
- Runa.@runamaru82025年3月8日買ったまた読みたい食おいしそうこちらも食の名手の一冊。檻を挟んで会話するのは「羊たちの〜」を彷彿とさせるが、食べものを通して互いの価値観を共有し合い変化させられる巧みな構造に引き込まれる。朝明けの味噌バターラーメン、たっぷりのバターを使った明太子スパゲッティ、とろけるようなバタークリームケーキ…思えばバターとは、忌避されつつ味わえば逆らえぬ魅力を持つもの。じわりと溶け出す蠱惑的な悪意と善意の狭間で、主人公が揺れるのも見どころです。
- つぶあん@tsubuannco2025年3月7日読み終わった借りてきた植物性より動物性。肉食女子というにはアウトローな被告人の心理は理解が難しい。実際の事件を参考にされていると思う。食べ物描写が濃厚で、この本を読んでいる時や読み終えた後は濃厚なものを口に入れたくなる。
- いしかわゆき@milkprincess172025年3月6日小説自分の適量を探すこと。どんなに美しくなっても、お金や地位を手に入れても、人脈を築いても、他人の匙加減でああだこうだ言われるんだから。自分にとっての美しさや居場所、関係性を見つけていきたいね。 バターをたっぷりと使った料理を頬張る主人公を見ていると、自分を慈しみたくなる。そう、料理は自分のためにしたって良いのだ。
- えみ@caleidoscopi0x2025年3月6日買った読み終わった良い小説だった。面白いかと聞かれると私が面白いと思う基準からは外れているし、これを面白いと言っていいのか分からない節があるので表現しないが、さまざまな問題について考えるきかっけを与えてくれる本であることは間違いない。私は物語(ストーリー)の強制力が好きでなく、感情移入してのめり込みたくない性格だが、この小説は古典的な構成になっていたため、物語として読まずにはいられなかったし、「物語に引き込まれた」という体の書き方しかできないのがある意味で悔しく思う。 人はさまざまな役割を引き受けている。それは無自覚なこともあれば、成り行き上そうなったり、自ら望んで引き受けたりする。社会生活を送る上で誰一人として役割から逃れることはできない。そういった意味では、実存主義的な生き方を現代で貫徹することはかなり難しい。 主人公である里佳は、いわゆるバリキャリで仕事に打ち込む女性である。恋人も仲の良い友人もいて仕事もそこそこ順調で、何も不満なく生きているように見えた。華奢でおそらく容姿も良いのだろう。気取らず、謙虚で「非の打ちどころがない」。ここに異分子である梶井真奈子(以下カジマナ)という存在が入ってくる。 里佳は人に甘えることをしない自立した女性として描かれていたが、カジマナを知った序盤でこんな話をしている。 「どんな女だって自分を許していいし、大切にされることを要求して構わないはずなのに、たったそれだけのことが、本当に難しい世の中だ。取材を通して知り合う、成功者と呼ばれる女性ほど、それが顕著に表れている。皆、何かに強く怯え、ストイックに我慢し、異常なほど謙虚で、必死に自分を守ろうとしている」 これはおそらく彼女自身の最初の気づきだろう。皆が必死に自分を守ろうとしている、と書いているが皆のなかに自分も含まれているのではないか。里佳は己のスペックを無視して、自分が一人の女であることにOKを出していたカジマナを知り、驚嘆した。大切にされるためには努力をしなければならない。里佳はそう考えているようだった。実際、容姿、特に体型に気を使い、モデルのようなスタイルを維持し続けている様子が描かれている。 しかし、カジマナの機嫌をとって事件に関する情報を聞き出すために、言われた通りの食べ物を次々に食べるうちに里佳の体重は増えていく。体重が増え、太ると、里佳の予想以上に周囲から非難される様子が描かれている。自分でもなんだかひどく悪いことのような気がしてしまい、ダイエットを始めるが、カジマナにその必要がないことを諭される。恋人の誠曰く、努力を怠っているように見えるからダメなんだと言われるが里佳は腑に落ちない。 この辺りの話で浮き彫りになるのは、女性にかけられている圧力の一つが「美しくあること」。ここで大事なのは容姿の問題だけではなく、女性が社会からかけられている圧力が複数あるということだ。何のためにその圧力に耐えているのか。一つは自分を守るためであり、もう一つは「大切にされるため」なのかもしれない。大切にされるとはどういうことだろうか。(もちろん男性も社会から圧力をかけられているが、その話は後ほどする) 人は誰しもが愛されたいと願っているし、愛したいと思っている、とするならば(多分この価値観も絶対ではない)、そのためには他人の評価から目を背けることはできない。そういった理屈で私たちは社会から要請される理想像に近づくために日々努力を惜しまない。なぜ親以外の愛は条件つきなのだろう。そして、どこを読んでも、「大切にされるため」について、詳しく描かれていない。全体を読み込んだ限り、批判されず受容されることが「大切にされる」ことなんじゃないかと推測する。誠はこんなことを言う。 「──心を鬼にして言うけど、太ることだけは、本当によくないって。俺は別に女の人の体型に理想とかないけど、まわりに努力が足りないって思われて、信頼を失うよ」 つまり、一般的には、男性は「女の人の体型に理想がある」のだ。そして、そのために努力を惜しまないのが絶対条件なのだろう。現代では、女性にとどまらず男性の容姿についても女性にとって何らかの理想があり、努力を惜しまないことが良いとされている。例えば若い世代では、清潔感を強く意識するために脱毛をする人は増加傾向にあるし、メイクをする男性も増えてきた。眉毛サロンに通う人もいるし、美容室を日常的に利用することは一部の人にとっては当たり前になっている。歯のホワイトニングも欠かさない。歯のホワイトニングなんて実際の口内環境が良くなるわけでもなく、清潔感があるように見えるだけだ。人に見られる仕事の人は必須で、その他の人もしている人は少なくない。男女差を綯い交ぜにして語ったが、要するにただ単に美の追求をしているのでなく、「大切にされるため」≒批判されずに人に受容されるために容姿に気遣うのだ。体型管理なんて当然で、仕事でも趣味でも努力し続ける姿が賞賛されるし、努力しない人はまわりの信頼を失うらしい。 カジマナは周囲の批判の目を気にすることなく、生活してきたのかもしれなかった。なぜなら彼女は欲望に忠実な人間として描かれているからだ。それが里佳にとっては鮮烈だった。里佳は、欲望することも、欲望させることも良くないことだと思い込んでいた。しかし、それも徐々に悪くないのではないかと思うようになる。欲望を抑えつけていると、自分が欲しているものが分からなくなる。実際里佳はカジマナに出会うまでは食の楽しみは少なく、自分が何を食べたいのかさえ分からなかったのだ。食べたいものを自分で作って好きなように食べることを豊かであると感じ始めていた。 カジマナは決して善人ではないし、正しい存在としては描かれていない。主観の世界で生きている人間で、現実を捻じ曲げて自分の世界に閉じこもっている。しかし、彼女が自分を愛しているのは本当かもしれない。なぜなら、自分の欲望には素直に従ってきたし、自分の身体も愛おしく思っている。そして、里佳にも「あなたはもっと自分を好きになるべきなんじゃない?そうしたら、合わない相手とのデートなんかで自分をすり減らすのはもったいない、と自然に思えるはずよ。自己評価が低すぎるんじゃないの」とアドバイスしているのだ。カジマナは、決して悪人でもないと私は思った。 里佳は彼女に振り回され、価値観をどんどん変えられていく。恋人や友人とギクシャクして、何もかもが崩壊しそうになる。けれども、彼女は潰れなかった。いや、一度は解体されてしまったのかもしれないが、里佳の仕事は形をやや変えて続くし、周りの人が離れていったわけでもない。彼女が捨て去ったものは、他人軸で生きることだった。自分の軸で生きたい、そして欲望も役割も「適量」でいい。里佳は誠にこう言っていた。「もう他人に消費されたくない。働き方とか人との付き合い方を、自分を軸にして、考えていきたいの」と。 里佳は皆が安らげる場所を提供するに至る。玲子は「里佳が中心に居ると、みんな役割から自由になれるんだよ。性別とか地位が関係なくなるの。磁場が歪むっていうのかな。昔からそういうところあったけど、最近は特に……」と話していた。この社会で生きていくのに役割を全て、そして常に降りる必要はなく、「適量」でいいのだ。主婦も会社員も、男も女も、いつもその姿を保たなくていいはずだ。私がこの本を読んで一番感じたのはそういったことだった。 カジマナについての話をする。彼女は本当に結婚相手を探して、男性を包み込むような存在でありたかったのか。「根本のところでは、誰にも所属するつもりはなかった。それは確かだ。でなければ、こんな時間に男を残してラーメンを食べたくなるわけがない」という話を本当だとするなら、彼女は男性をケアする役割を全うしたかったわけではないのかもしれない。彼女もまた、里佳たちとは異なる形で役割を引き受け、生活してきた。これは想像だが、そうしなければ彼女は生きていけなかったのではないか。料理を作らなければ、男性をケアしなければ自分を保てなかったのではないだろうか。 カジマナが執拗に本物にこだわっていたのも気にかかる。カジマナはおそらく「本物」ではなかった。なぜなら生まれも育ちも田舎で、対比的に描かれている料理教室に通う人たちのような優雅な暮らしをしていたわけでもないのに、ジョエル・ロブションのフレンチを里佳に食べてくるように話していた。つまり、本物にこだわるのは本物への憧憬であって、元々本物ではないことがコンプレックスだったのではないか。(念のため言っておくと、実際のところ本物や偽物といった表現は適切ではない。カジマナが使っていた言葉だから借用して話している)彼女にとって心から愛せた食べ物はバター醤油ご飯で、それこそが本物だったのだ。なぜなら、カジマナの育った場所に良いバターがあり、自分のために作るといえば「バター醤油ご飯や、たらこパスタくらい」だったからだ。里佳に初めにすすめたのも、もしかしたらそれが自信を持って言える料理だったからかもしれない。彼女の原点はバターを使った簡単な料理にある。彼女は料理が得意だったのかもしれないが、本物にこだわるあまり、何かと何かをミックスするなどのアレンジが不得意だった。レシピ通りにしか作れないのは、オリジナリティの欠如を物語っている。彼女のアイデンティティとは何だったのだろう。 彼女はずっと孤独で、確かに心から話せる友人あるいはパートナーを求めていたんだろうと思う。カジマナが料理教室で七面鳥の料理を習って、教室の皆を招待して振る舞おうとしていたのは、きっと友達が欲しかったのだ。里佳ともあと一歩でなれたかもしれなかった。 「料理って、自分のために作ってもいいんですねって、ぽつんと言っていた。自分のためにしたことないの?って聞いたら、ええ、って。妹や恋人と一緒の時はちゃんと作りますが、一人のときはご飯とバターと醤油とか、目玉焼きご飯とか、たらこパスタとか、そんな簡単なものしか、ってしょんぼりした感じで言うの。私が、それずぼらな私にしてみたら立派な料理だけど、って言ったら、みんなが笑って、その時、梶井さんは初めてニコッてしたの」 カジマナが初めて笑った描写を読んだとき、とてつもなく胸が苦しくなった。彼女の料理教室での願いは果たされることなく、そして里佳とも友達になれなかった。裁判の際にカジマナは誰かを探していたのに、目が合わずそのまま退出した。その場面も印象的だった。 女性らしさ、男性らしさとはなんだろう。私にはそれが分からないのだ。誠が里佳の料理を素直に受け入れずに「そういうのは求めてないから」といった言葉に里佳はモヤっとするのも、どうしてモヤっとするのか分からないのだ。普通に読めば「女性は料理をするもの」という認識が見えるからフェミニズムに理解がある素振りをする誠に嫌気が差していると解釈できるかもしれないが、里佳を一人の人間として見れば、元々料理を作らない人に料理を求めるなんてことしないよ、くらいの意味にしかならない。 要所要所でそういった場面があり、その度に書き手の意図(問題提起する意図)が見えすぎて、読者が作者の狙い通りに引っ張られることを想像しながら読むと食傷気味になるのだ。 皆がなるべく平等にありのままで暮らすことを目指すとしてやや環境を変えるとするなら、女性が働きやすい環境を整えるのは大事だが、働かなければならない空気をつくるのは良くないし、主婦が肩身の狭い思いをしなくて済むような雰囲気がないといけない。逆も然りで、男性も仕事をしてもいいし、主夫でもいい。でももっというならば、極端になるが、自分のことを自分でケアし、一人一人が自立できるようになった方がいい。仕事も家事も一人できて当然だし、それが平等ではないのか。生物学的な性差はあるのかもしれないが、例えば生理が重くて仕事ができないので、休みをつくるのでなく、生理が来ても辛くならないように医学を進歩させるべきなのではないか。机上の空論だが、極端なことをいえばそんな気がしてしまう。 カジマナの周囲で亡くなった人たちは、自分をケアできない人たちばかりだった。男性という大きな主語で皆そうだとは言いたくないが、男性の一部はこのケアの問題に悩まされている。仕事一筋でやってきた人が、家事を一切できないのは想像に易く、そういう人は一定数いるだろう。「威厳のある父」は弱音を吐くことも許されず、仕事も何食わぬ顔で淡々とこなさなければならない。同性同士でケアしあうことは少なく、異性にそれを求める場合、可能であったとしてもパートナーくらいだ。男社会では、絶対になめられてはいけない。女性が痩せてなければならないという圧力を感じている一方で男性もこのような圧力のかかった中で生きている。 なんて生きづらい世の中なんだろう。だからこそ、男や女や社会的地位を忘れて羽を伸ばす場所が必要なのだ。大きな場所を作る必要はなく、二者関係のなかでそれがなされてもいいし、小規模な複数人のグループでそういった場を設けてもいい。地域社会が機能していた時代にもしかしたらそのような場があったかもしれない、上手く形を変えて復活させればいいのだ。皆、時々は普段の自分を忘れて休んだ方がいい。 この本を人に簡単に説明するなら、どう紹介したらいいのだろう。フェミニズムの話?否。実際にあった事件を元にしたミステリー?否。玲子と里佳の再生の物語?惜しい。私なら「本当に主体的に生きるとはどういうことなのかを探る話」というかもしれない。
- 権子@m_gonko2025年2月17日読み終わった心に残る一冊マイベスト小説2025/2/17 読了 タイトルの如く、バターが主軸となる社会派長編。主人公は女性週刊誌記者で、殺人事件の容疑者と関わり出したことから、主人公やその関係者が心を乱されることとなる。 事件・料理・友情の要素が凄く上手く噛み合っており、久々に読み応えがある本に出会えました。本当に面白かった…。 あと、小説に出てくる料理が美味しそうなものが多くて…。本からバターや料理の香りがしてきたよ…。
- utai@amanda_62502025年2月16日読み終わった2025.2.16読了 初めて読んだ柚木作品が「らんたん」だったので、結構淡々と深いお話を書かれるのかなと思っていたけど、すごく感情ぶん回されて読んでる間とても楽しかった。 読み切ってから、食べたいものを食べる‼️をめっちゃ意識して生活してる。適量を知りたい。ローカルなアジアの味が好きと気づき始めた。 全てのシスターたちに光あれ。 カジマナがずっとカジマナのままでよかった。
- さくら@sakura2024年5月31日かつて読んだ素晴らしかった。 「自分を見つける」というとふわっとしちゃうけど、敏腕記者が取材を通して行うから隙がない感じがする。 バターを食べたくなって、チョイスが好きになる。