JUNYA WARASHINA "犬婿入り" 2026年5月18日

犬婿入り
犬婿入り
多和田葉子
北村みつこの前に現れる謎の男・太郎。人とも獣ともつかないその存在は、『南総里見八犬伝』が示した「犬との婚姻=異界への通路」という古い記憶を、静かに呼び覚ます。 この物語の不気味さは、異形の存在そのものではなく、みつこが太郎をあまりにも自然に受け入れてしまうことにある。世界の綻びは見えている。なのに誰も、それを破綻とは呼ばない。噂は歪みながら共同体に吸収され、日常はそのまま続いていく。 異界を飼い慣らしたのは、人間の側だったのか。それとも——気づかないうちに、飼い慣らされていたのは私たちの方だったのか。 多和田葉子は、その答えをあえて手渡さない。
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