芦花 "春にして君を離れ (クリステ..." 2026年5月19日

芦花
芦花
@ashika_garnet
2026年5月19日
春にして君を離れ (クリスティー文庫)
春にして君を離れ (クリスティー文庫)
アガサ・クリスティー,
中村妙子
読み終わりました。 「並のホラーより怖い」と評判だったのですが、本当に怖かった。 自分の醜悪さを暴かれた気分。 とあるジェントリ階級の夫人が、遠方に住む娘への見舞の帰りに数年ぶりに旧友と出会う。すっかりうらぶれた様子の友人を憐れみながら優越感に浸る。 友人と別れた帰路、思わぬ足止めを食らった主人公は、暇にあかせて今までの自身の生き方や家族、そして彼女の人生を通り過ぎて行った人たちに思いを馳せる。 すると、それまで意識してこなかった出来事に違和感を覚え始める。 家庭を切り盛りすることに夢中で「とるに足りないこと」と切り捨ててきた色々なことが、思ってもいなかった意味を帯びてくる。 それは、「うまくいっている」と思っていた彼女の人生とはまったく別の顔を持っていて……という話です。 主人公はよき妻よき母という自負があるけれど、家族を強烈な支配欲でコントロールしている女性。 子どもたちはそんな母親に辟易し距離を取っている。夫もそんな彼女を諦観と哀れみでもって放置している。 この善意の加害性に本人が気がついていく。しかも誰に指摘されたわけでもない。 主人公が体験する認知の不協和ともいう不快感を、主人公と一緒に体験していく。 これが読んでて本当に苦しかった。 全く共感できないのに、どこかで覚えがあるというか。 「家族を愛していたけど、大切にはしていなかった」と自覚するくだり、泣いちゃうかと思った。身に覚えがありすぎて。 「家族のためにと思っていたあれこれは、ただの自己満足ではなかったか」 「自他境界は引けているか」 「妻と母親という役に溺れて、歪んだ万能感を抱いてはいないか」 気になる。 でも今更聞けない。 主人公もそう。
読書のSNS&記録アプリ
hero-image
詳しく見る
©fuzkue 2025, All rights reserved