阿久津隆 "響きと怒り" 2026年5月5日

阿久津隆
阿久津隆
@akttkc
2026年5月5日
響きと怒り
響きと怒り
ウィリアム・フォークナー
3時半ごろ布団に入り、思うようにすぐには眠くならず、小説は進んでいき、クェンティンの姿がない、部屋が静か過ぎる、ジェイソンが何かに勘づく、「鍵をください」と母に言い、「鍵ですよ」と母に言い、「さあ鍵を出してください」と母に言い、「鍵をくれってば、この間抜けばばあ!」と母に言った。 やっと眠くなったので閉じて寝ようとして、実際うとうとしていたが、頭がずっと表面に残っている感じで、遊ちゃんが、フランフランじゃなくて、と笑って、イランイランとフランキンセンスだよ、面白いね、とはっきりとした話し方で言って、そこで目が覚めて、眠気が近くにはなく、なので再び明かりをつけて読書に戻り、ジェイソンは破滅みたいなものに向かっていて、クェンティンは遠くに向かっていて、家に残されたベンジーはディルシーたちに連れられて黒人教会に行って、今日はゲスト牧師の日だった。入ってきたゲスト牧師はしかし頼りなさそうな、期待外れの風貌だった。しかし「兄弟姉妹よ!」と声を出すと空気が一変して、彼の声はホルンのように鳴り響いた。「おらは神の子羊の思い出と血を持っているだ!」 p.515 「長い、冷たいいく年かが―なあ、いいですだか、兄弟たちよ、長い冷たいいく年かがすぎるとき―おらにはその光が見えるだし、その言葉が聞こえるだ。哀れな罪人たちよ! あれらのゆり動く戦車はエジプトで消えうせただ。そして多くの年月がすぎていっただ。かつて金のあった者どもも今はどこにいるだ? なあ兄弟よ。かつては貧しかった者も今はどこにいるだ? なあ姉妹たちよ! おお、よく聞くがいいだ。もしお前らが古き救いの乳と露にあずからなければ、長い、冷たいいく年かがすぎていくとき、どうなると思うだ!」 「はい、イエス様!」 教会は熱狂していき、「うーーーーん!」という蜂の羽音のような低い音が轟き、「イエス様! イエス様!」とトランスしていった。 終わるとディルシーは涙を流して歩きながら、「おらは、最初とそして最後を見ただ」と言って、「おらは、初めを見ただし、そして今終わりが見えるだ」と言った。
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