
すーどん
@Su_Udon
2026年5月20日
ババヤガの夜
王谷晶
読み終わった
英国推理作家協会賞受賞作として知り、期待して読破。とある仕掛けが終盤に発動し、読者の予想を裏切ることになるが、他の作品で散々引っかかった手法だったので正直あまり意外性はないと感じた。また、2つの時制の繰り返しでストーリーが進むのだが、そこの雰囲気の違和感で“ここに何か仕掛けがある”という予感をさせてしまうのがミステリとして読むとイマイチかもしれない。
バイオレンスアクションとしては、描写に精彩を欠くというか、もう一歩という感じがある。ただその場で起きたアクションを単調に描写しすぎという気がする。持論だが、小説やマンガといった活字がかかわるメディアでアクションをやるとすれば動きにともなう意志が重要になると思う。“どうしてこのキャラクターはこう体を動かすのか”、“このキャラクターが攻撃を受けて何を思うのか”これらを疾走感をもたせて描写するのは至難だが、小説でアクションをやるというのはこれができるということだと思う。この仕掛けには敵となるキャラをどれだけ作り込み、動かすかというのも重要になってくる。しかし、本作ではそこがもっとも足りない部分のように思えた。
さらに、中盤のメディアスクラムのシーンは流石にありえないというかリアリティがなさすぎると思ってしまい、ここから本作通して疑いの目で読むことになってしまった。田舎町の夫婦が事故った家族を助ける、そしてそれを撮影した動画を基にメディアが持て囃し、自宅に突撃してくるような過密な取材を行う。撮影自体はあり得るし、現在そういう映像はSNSに散布されている。しかし、過密取材については2000年代以前であればあり得たかもしれないが、現在では、警察が表彰のために捜している、SNSがきっかけで特定される、等の方が自然だし、意地悪な見方をすれば、女性に対しての偏見を糾そうとする傍ら、メディアに対しては一昔前以上の偏見を持って描くのはかなり的外れだと感じた。
ただ、それらを差し引いてもシスターフッドとしての完成度はかなり高く、主人公2人の心の動きや思想はかなり伝わってきた。女性であることの苦しみ、社会の中での役割……暴力団という環境下だからこそ、戯画的と思えるほどそれらが強調される。
襟を正す思いで読み切った。
