
和月
@wanotsuki
2026年5月19日
コンビニ人間
村田沙耶香
読み終わった
「人間」の持つ気持ち悪さと「人間に似た生き物」の持つ薄気味悪さを両方感じさせてくれる作品。面白かった。
主人公は周囲から奇妙がられる存在で、多くの人間が抱く道徳や善悪の感覚を持ち合わせていない。彼女は彼女なりの思考で行動するが、社会のコミュニティでは普通ではないと判断される。その結果、他者を観察して動きを模倣して、社会と迎合する人物になりきる、コンビニ店員の古倉恵子が生まれる。社会の正常な部品。普通に擬態する術を身につけた主人公は、働く自分の姿をそう表する。彼女ほどでは無いにしても、ありのままの自分では過ごせない場面も多々ある。赤ん坊だって両親の模倣をして育っていくことを考えると、主人公の行動はある種、社会に属する人間の一側面をデフォルメしているのではないか?と感じた。
個性を削ぎ落とさなければムラから排除される、という同調圧力の強い環境で、主人公が苦悩するという設定はよくある。一旦は社会に溶け込んだように見えても、月日が流れることで歯車が合わなくなり、平穏な日常が崩壊していく様は王道のストーリー展開だ。
しかし本作の最大の魅力は、そこからまた一捻りあるラストに向かう所なのだ。社会と遮断されない為の役割が、生きる意味だと気付く。手段が目的に形を変える。個性と社会の乖離に苦悩する人間が別の動物に生まれ変わる。この羽化に至るまでの描写が、この物語の真骨頂だと感じた。




