きらた "此の世の果ての殺人" 2026年5月21日

きらた
きらた
@kirata
2026年5月21日
此の世の果ての殺人
母は早い段階で逃げ出し、父は一昨日首を吊った 弟は引きこもったままで2階から降りてこない── そんな話をしながら教習車を走らせていたその日、ソレは落ちてきた フロントガラスに蜘蛛の巣のようなヒビ割れを入れ、ボンネットで跳ね、車の進行方向に転がったソレは男の遺体 死んでいるのはすぐわかった 「聞いたことないかな?奥地自殺」 小惑星が衝突して地球は滅亡する 9月のその発表で世界は混乱を極めたが、中でも日本の騒乱は凄まじいものがあった 衝突予定地は日本、熊本県阿蘇郡だったからだ 日本から逃げ出す人や自殺する人 1日の自殺者が千人になる頃から増え始めたのが、山奥で死に自然に還るとの名目を掲げた奥地自殺だった 「なんで自殺なんかするんだろうね」 問われ、小春の胸に梁にぶら下がった父を見た時の感情が蘇る あとふたつきも待てば死ぬのに 痛くて苦しい道を選ぶ必要はないのに‥‥ 10月初旬、避難勧告が出て、中旬には電気もガスも水道も止まり、生活インフラの大部分が失われた そんな地に留まる小春は今、教習所に通っている 12月、免許を取ろうと向かった教習所でイサガワ先生と会ったのだ 「ほんと変わった子だよね、ハルちゃん」 けれど、イサガワ先生だって変な人なのだ 「今日は何番の車に乗る?」 「昨日の車じゃなかったらなんでもいいです」 「ちょっと臭ってたもんね」 本日の実技は高速道路での教習 列の端っこに停めてあるから出しやすいとの理由で車を決め、車に向かい 小春は、トランクの中に息絶えた見知らぬ女性を発見した 一見して他殺体だとわかる惨い遺体 誰が何故彼女を殺したのか? ──2ヶ月と少し待てばみんな死ぬのに── 人類滅亡が迫る終末感と、警察が機能しない中で起きた連続殺人の謎を、元刑事の教習所教官とその生徒が解く特殊設定ミステリものなのだが、個人的には、事件の謎解きよりも終末を迎える世界で生きる人々の心に興味を惹かれた 個人的には“終末世界のロードノベル、殺人事件を添えて”として読んでいたように思う 事件の謎を探りながら移動する2人 移動先で出会う、そこで生きる人とのふれ合い(?) やがて来るその日がわかっているからこそ、その人本来の人格や品性、誰のためでもなく自分自身に向けた矜持みたいなものがあからさまになる 同行者が増える2章目(章で良いのだろうか?)からそれがより顕著になる 事件自体は予測出来ていた胸糞動機で、犯人にも意外性は感じませんでしたが、解明するまでの展開が‥読者の興味を色んな方向に向かせてるみたいな感じで、エピソードを散りばめている 書き慣れてる感がある構成に思えました(わたし何様?) ゲームやアニメの影響を感じる世界観とキャラ設定だとは思いましたが、ある意味こういう作品がイマドキなのでしょうね 若さが持つ熱を突きつけられたかのような作品でした
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