
いーじーらいす
@EasyRICE
2026年5月21日

キオスク
ローベルト・ゼーターラー,
酒寄進一
読み終わった
「トゥルスニエクのあごにうっすらと血が流れていた。細い血のひと筋。糸よりも細いくらいだ。トゥルスニエクの目が絶望の色に染まっていた。ベールのようだ、とフランツは思った。すけて見えるほど薄い黒いベール。その瞬間、すべてを理解した。ほんの一瞬、未来に向かって窓がひらいた。その窓から真っ白な不安が吹きこんできた。ザルツカンマーグートから出てきたちびで、愚かで、無力な少年に向かって。さめざめと泣きながら、フランツは膝をつき、トゥルスニエクの首にかじりついて、体を押しつけた。「放すんだ、フランツ!」トゥルスニエクはフランツの髪に顔をうずめて、かすれた声でささやいた。「頼む。放してくれ!」」