まろ
@maro_books
2026年5月9日
神様のボート
江國香織
読み終わった
何年も前に交わした夫(あのひと)との約束だけを拠り所に、転々と引っ越しを繰り返す母と着いてゆく娘の旅の物語。
母と娘の視点が交互に描かれる形式で、それぞれの心情にスイッチしながら読むことができる。解説にもあったが、母目線から見ると「恋愛の物語」、娘目線から見ると「成長物語」という2つの側面を持つのが面白い。夫(あのひと)に対しての母と娘それぞれの考え方や母娘間の関係性が時を経るごとに少しずつ変化してゆき、2人が衝突してしまうシーンでは心が揺さぶられてしまった。
愛の重さは当事者間が感じ取ることだと思うので、母のあの人に対する愛が重いかどうかは言及できないが、少なくとも母とあの人が常に愛し合っていた事は紛れも無い真実である。それこそが母にとっての「現実」であり、儚く美しいものだったと思う。
テーマは濃厚だが、文章は水面に浮かぶボートのように軽やかであり、そこにはゆらゆらと揺蕩う彼女らが確かにあった。