オバマサキ "庭に埋めたものは掘り起こさな..." 2025年3月20日

庭に埋めたものは掘り起こさなければならない
待合室に横たわる老婆。スーパーのセルフレジで止まらなくなった涙。看護師が掛る固そうな毛布。「生物として健やかに過ごしてください」。「考える葦なのに」と脳内でしか吐けない言葉。もう大丈夫を証明する難しさ。救急車の中、耳元にあてがわれた携帯から届く必死にわたしの名前を叫ぶ母の声。聴診器をあてた瞬間に「ダメだこりゃ」と笑った志村けん似の救命医。白い巨塔よろしくの白い行列。手術せずに済んだ安堵感。初めて見た走馬灯。文字が逃げていく。文章の意味が分からない。 幼少期の持病での搬送経験や入院経験、大人になって初めての受診科を訪れた時の緊張感たちが掘り起こされる。 お土産でもらった3色ぼた餅を食べながら、春分の日にI部を読み終えた。作者の話であり、わたしの物語だった。傲慢にもそう思った。なんだ、このひともそう感じたんだって小さく安堵できた。必要なひとに届いてほしい、わたしのように。
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