のーとみ
@notomi
2025年3月22日

かつて読んだ
宮澤伊織「ときときチャンネル 宇宙飲んでみた」をオーディブルで。動画配信をする二人の女性の配信中の喋りだけで構成される連作短編集だから、もしかしたら文字で読むよりオーディブル向きの作品かもしれない。奈波果林がチャンネルを開設したMC役を、藤井彩加がMCの同居人でマッドサイエンティストを演じて、二人のやり取りと彼女らが読む視聴者のコメントだけで物語は構成される。その二人の演技がスムーズに頭に入る。
やってることは結構ハードなSFで、説明が面倒な化学理論がバンバン出てくるのだけど、会話の作り方と物語としての構成が上手いからスルスルと聴ける(読める)。この文体は発明だなあ。この設定でラノベにせずにハードSFをハードなままゆるく読ませることに成功してて、この人、ほんと空想科学小説としてのSFが好きなんだなあと思う。「ウは宇宙ヤバいのウ!」の改稿ヴァージョンと直接繋がる、坂田靖子的な世界でハードSFやる試み。
世界線と並行世界の違いとか、しっかり分かりやすく説明したり、動画配信の面白さとダメさを丸ごとネタにしたり、細部で結構、現実社会批判みたいなことも入れつつ、イデオロギッシュになることなく、「宇宙を切り取ってマグカップに入れて飲む」ということが、どうすれば可能か、それを飲むとどうなるのか、という思考実験を丁寧に書いて、この連作が何を書いてるのかを最初に提示するのも上手い。「裏世界ピクニック」がファンタジーじゃなくてSFになってるのも、こういう丁寧な作業あってだなと思う。そういえば「神々の歩法」は多分、前に買ってた気がするので、積んでないでさっさと読まなきゃ。



